中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!
【第531回】 米スターバックスが中国コーヒー文化普及の立役者

日系3社揃い踏みのコンビニコーヒーも成長見込み

2022年8月3日更新

ファミリーマートは自社ブランドのコーヒーを導入
 中国では伝統的にお茶を飲む文化と習慣があるので、コーヒーは広がらないよ…と言われていたのは今昔。今や上海や北京などの大都市だけでなく、地方都市でも繁華街にあるモールには、スターバックスやコスタなど欧米のチェーン店が出店しているのが当たり前の光景です。

 中国のコーヒー市場は、1989年にネスレが中国で初めて発売したインスタントコーヒーからスタートします。流通しやすく、かつお湯を注ぐだけで簡単に作れるインスタントコーヒーが、中国人にとって新しい体験となりました。ここでいうインスタントコーヒーとは「三合一」(3 in 1)と呼ばれる、コーヒーと砂糖とミルクの粉が一緒にパッケージされたものが主流でした。

 1990年代には、台湾系の「上島咖啡」(UBCコーヒー)や「真鍋咖啡」などサンドイッチや中華の定食も提供する“喫茶店”的なカフェが登場。その後、米系スターバックスが1999年に北京で第一号店をオープンし、大都市を中心に店舗網を拡げていく中、英系コスタコーヒーや香港系パシフィックコーヒー(太平洋珈琲)も参入。2014年頃には、Caffe Bene、Zoo、MAAN Coffeeなど韓国系カフェブームもあり、コーヒーを飲みながら、中国で「第三空間」と呼ばれるサードプレイスで時間を過ごすのが、一つのライフスタイルになりました。

 2016年頃からはスマホ決済の普及に伴い、フードデリバリー市場が急拡大します。中国で「新小売」と呼ばれるOMO(Online Merge Offline)、つまりスマホでオーダーしてデリバリーしてもらうという新たなライフスタイルが浸透しはじめます。この「新小売」の概念を取り入れて、一気に店舗網を広げたのがラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)です。

 コーヒーのデリバリー市場が急成長する中、スターバックスもデリバリーサービスに参入するなど、中国で「快珈琲」と称されるファストコーヒーの競争が激化しました。オフィスでも手軽にオーダーできるデリバリーコーヒーで、コーヒーの味に慣れ親しんできた中国の人々は、徐々にコーヒーの“美味しさ”に目覚めます。厳選されたコーヒー豆の産地や品種、原産地から、豆本来の風味を生かす焙煎方法などにもこだわるようになり、ハンドドリップの人気が高まりました。

 中国で「精品珈琲」と称されるスペシャルティコーヒー時代の到来です。マナーコーヒー(Manner Coffee)やシーソーコーヒー(Seesaw Coffee)、Mスタンド(M Stand)、%アラビカなど新興のカフェチェーン店が相次いで登場しました。中国で「慢珈琲」と呼ばれる、こうしたスローコーヒーは、コーヒーのクオリティだけでなく、店内の内装や環境も重視し、価格も高めながら、多くの客で賑わっています。

 ファストコーヒーの代表でもあるコンビニコーヒーも定着しています。中国で店舗展開する日系のファミリーマート、ローソン、セブンイレブンはいずれも2011~2013年頃に相次いで自社ブランドのコーヒーを導入しています。

 利便性の高さと低価格を理由に、コンビニのコーヒーを選んでいると回答した人が60%に達した調査結果もあります。残りの40%は、コーヒーの味が好みでないことや、種類が限られることなどを理由にコンビニでコーヒーを買わないと答えたようですが、今後コンビニでコーヒーを買う機会を増やすと回答した人も35%いたようで、コスパを重視する若い人たちを中心に、今後もコンビニコーヒーのさらなる成長が見込めそうです。
A4サイズで印刷

Copyright (C) CastGlobal Consulting Co., Ltd. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.
本資料に関する著作権は弊社又は弊社に所属する作成者に属するものであり、
本資料の無断引用、無断変更、転写又は複写は固くお断りいたします。

前ページへ戻る

その他メルマガコラム記事

地元愛強い(?)地方在住「小鎮青年」
地元愛強い(?)地方在住「小鎮青年」

2024年04月24日

地元愛強い(?)地方在住「小鎮青年」
6割が不動産所有(?)の地方在住「小鎮青年」
6割が不動産所有(?)の地方在住「小鎮青年」

2024年04月17日

6割が不動産所有(?)の地方在住「小鎮青年」
日本ブランドもレトロ感演出で勝負すべき!?
日本ブランドもレトロ感演出で勝負すべき!?

2024年04月10日

日本ブランドもレトロ感演出で勝負すべき!?
下沈市場攻略は動画プラットフォームの活用を!
下沈市場攻略は動画プラットフォームの活用を!

2024年04月03日

下沈市場攻略は動画プラットフォームの活用を!
「下沈市場」と「小鎮青年」に注目すべし!
「下沈市場」と「小鎮青年」に注目すべし!

2024年03月27日

「下沈市場」と「小鎮青年」に注目すべし!
若者が選ぶキッチン三大神器とは?
若者が選ぶキッチン三大神器とは?

2024年03月20日

若者が選ぶキッチン三大神器とは?
「療癒経済」(癒しエコノミー)とは?
「療癒経済」(癒しエコノミー)とは?

2024年03月13日

「療癒経済」(癒しエコノミー)とは?
現地パートナーとの協業がますます大切に
現地パートナーとの協業がますます大切に

2024年03月06日

現地パートナーとの協業がますます大切に
SNSで大量発生する「momo」(ピンク恐竜)とは?
SNSで大量発生する「momo」(ピンク恐竜)とは?

2024年02月28日

SNSで大量発生する「momo」(ピンク恐竜)とは?
街中そぞろ歩きの「Citywalk」がブームに
街中そぞろ歩きの「Citywalk」がブームに

2024年02月21日

街中そぞろ歩きの「Citywalk」がブームに
SNSで仲間探す「搭子(ダーズ)社交」とは?
SNSで仲間探す「搭子(ダーズ)社交」とは?

2024年02月14日

SNSで仲間探す「搭子(ダーズ)社交」とは?
買って!と煽らない「慢直播」(スローライブ)とは?
買って!と煽らない「慢直播」(スローライブ)とは?

2024年02月07日

買って!と煽らない「慢直播」(スローライブ)とは?
コロナを経て広がる「理性消費」とは?
コロナを経て広がる「理性消費」とは?

2024年01月31日

コロナを経て広がる「理性消費」とは?
50歳以上の高齢者KOLが2022年に倍増
50歳以上の高齢者KOLが2022年に倍増

2024年01月24日

50歳以上の高齢者KOLが2022年に倍増
60歳以上のネットユーザー1.5億人に
60歳以上のネットユーザー1.5億人に

2024年01月17日

60歳以上のネットユーザー1.5億人に
2023年中国消費トレンド番付発表!
2023年中国消費トレンド番付発表!

2024年01月10日

2023年中国消費トレンド番付発表!
刻々と変化しつづける2023年の中国消費
刻々と変化しつづける2023年の中国消費

2023年12月27日

刻々と変化しつづける2023年の中国消費
貯蓄志向高まる中、マーケティング力が必須に
貯蓄志向高まる中、マーケティング力が必須に

2023年12月20日

貯蓄志向高まる中、マーケティング力が必須に
高齢者とブルーカラーもKOLの時代に
高齢者とブルーカラーもKOLの時代に

2023年12月13日

高齢者とブルーカラーもKOLの時代に
“出前”ECの「即時零售」(インスタント・リテール)急成長
“出前”ECの「即時零售」(インスタント・リテール)急成長

2023年12月06日

“出前”ECの「即時零售」(インスタント・リテール)急成長
もっと見る

飲食に関連する記事

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応

2024年04月23日

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに

2024年04月23日

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに
RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場
RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場

2024年04月22日

RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場
もっと見る

消費トレンドに関連する記事

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応

2024年04月23日

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析②~「3-5-8」のラインナップで各種シーンに対応
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに
中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに

2024年04月23日

中国RTD飲料市場を牛耳るRIO(鋭澳)を徹底分析①~幅広いラインナップと巧みなマーケティングでトップに
RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場
RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場

2024年04月22日

RIO(鋭澳)が2021年に9割近くのシェアに 小規模ながら急成長中のRTD(Ready to Drink)飲料市場
もっと見る
pageTop