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【第75回】 今後の中国消費を引っ張る90后の横顔

90后はニート世代? 現実的な若者たち

2013年6月12日更新

 最近クライアントとの会議やメディアからの取材時でよく耳にするキーワードに「90后」があります。「90后」とは1990年代生まれの世代で、今年14歳から23歳になる若者を指します。日本では「団塊の世代」「団塊ジュニア」「平成生まれ」「ゆとり教育世代」など年代を一定間隔で分けてグループ化しますが、中国では単に何年代生まれかで区分します。よって1980年代生まれから「80后」「70后」「60后」とさかのぼります。

 1979年から本格化する「一人っ子政策」の申し子である80后は、両親だけではなく両親の親、つまり祖父母からの寵愛も受け、「6つの財布」(両親2人と双方の祖父母4人の計6人から世話を見られていることを指す)に支えられながら幼少期を過ごしました。また青年期も、毎月の給与を使い果たしてしまう「月光族」や、新しいモデルが出るたびにケータイを買い替える「新しいもの好き」など、彼らの新たな消費及び生活概念が注目を集めました。

 日本でも1990年代には女子高生が中心となってポケベルやケータイなどの流行をけん引し、その消費や普及を後押しした経緯もあります。こうした現象は中国ではどちらかというと90后ではなく80后の役割だったような気がします。

 その意味において90后はその後の時代背景を反映しているのではないでしょうか。つまり、日本でいうバブル崩壊後の「失われた20年」、景気低迷期に蔓延したニート(正社員の職に就かずアルバイトで生計を立てる)世代に近いのではと思います。

 中国の若者世代を語るうえで欠かせないのが、その親世代の考察でしょう。例えば、80后の親世代は50后や60后が中心。文化大革命から小平氏が提唱した改革開放政策が始まる前の貧しく苦しい時代を生きてきました。こうした親に育てられた子供は必然的に自立せざるをえず、自分の欲しいものは自分で稼いで手に入れるというハングリー精神を持つ最後の世代と言えるでしょう。高級ブランド品やマイカー、マイホームに対する執着も強いのが特徴です。

 一方、90后の親世代は60后や70后。改革開放政策の「先富論」により、事業や不動産など市場経済化が進み生活が豊かになり始めた世代。生活に余裕ができた家庭で育った90后は、基本的に欲しいものは与えられる幼少青年期を過ごし、80后のようにモノに対する執着や物欲主義的な発想は薄いような気がします。

 また、置かれた経済環境にも大きな違いがあります。80后がちょうど社会に出るころは海外からの投資が増えるとともに株価や不動産が高騰したいわゆるバブル期。社会全体が高度成長に湧き、ルイ・ヴィトンやフェラガモなどの高級ブランド品を嗜好し、社会的ステータスを誇示する風潮がありました。

 一方、2008年のリーマンショックとともに社会に出ることになった90后。親世代の金銭的援助などもあり生活が苦しくなることはありませんが、経済成長も鈍化し社会全体が停滞する雰囲気の中、消費も考え方も現実的にならざるをえなくなりました。90后のある女性は「カバンなどはブランドではなく、安くてもいいので実用的かどうかで選ぶ」といい、どうせ同じお金を使うならモノにではなく旅行など自分の教養や見聞を高められるほうがいいと言っていました。

 もちろん、80后も90后も人それぞれ。結婚や出産などでも価値観が大きく変わってくるので一概にグループ化できませんが、こうした時代背景や生まれ育った環境の違いを把握したうえで今後の中国消費の行方を探る目が必要なのではないでしょうか。

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