最近、上海の街角でよく見かける広告の一つに、医薬品のデリバリーが挙げられます。特にフードデリバリー大手の美団(メイトゥアン)が、人気俳優でバラエティでも活躍する鄧超(ダン・チャオ)をイメージキャラクターに起用し、企業カラーの黄色で目立ちます。アリババ系の天猫(Tモール)や、2020年12月に香港で上場した京東健康(JDヘルス)もよく目にします。
先週のメルマガでもお伝えした通り、中国でのオンライン医療の普及に伴い、医者にスマホから気軽にアドバイスを求めることが容易になりました。医者から処方された薬は、やはり安心感もあり、なおかつ、それが自宅まで届けてもらえるとなると、特に体調を崩した時などは本当に助かります。
中国では、このようにスマホから医薬品の注文を受け、オフラインの薬局から配送するO2O(Online to Offline)方式が普及。自営プラットフォーム形式の叮当快薬(ディンダン)、第三者プラットフォーム形式の阿里健康(アリヘルス)や京東健康、そして美団や餓了麼などフードデリバリーと提携した3パターンがあります。
新型コロナウイルスの流行で、医薬品デリバリーの成長が加速しました。中国調査会社のiiMedia Research(艾媒諮詢)によると、2020年の中国医薬品EC(電子商取引)の取引規模は1,956億元で、21年には2,260億元に達すると見込まれています。
中国で最近注目を集める「大健康」というキーワード。中国人の健康意識の高まりを背景に、ヒトの生から老い、病、そして死に至るまでの健康について、単に病気の治療や薬だけでなく、その予防から体力・免疫力の増長、さらには衣食住から生活習慣に至る自己健康管理を促す概念です。これら広い意味での「大健康」産業の発展が、中国で広く議論されるようになっています。
艾媒諮詢によると、中国「大健康」市場の規模は、2020年に7.4兆元に達し、特に普及と発展が進むオンライン医療分野では、モバイル医療・健康の市場規模が、前年比7割近く増で544.7億元になったとレポートしています。
中国インターネット情報センター(中国互聯網絡信息中心:CNNIC)の第46回「中国インターネット発展状況統計報告」でも、2020年6月時点の中国オンライン医療サービスユーザー数は2.76億人で、ネットユーザー全体の29.4%を占めているとのこと。
健康や医療に対する意識とニーズを高める中国。ネットでの診察に抵抗感どころか、当たり前のように慣れ親しみつつある中国人が、クロスボーダーで日本の医療を求める日が来るのも、そう遠くないかもしれません。