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【第107回】 本格的テイクオフなるか、スポーツ用品市場
ファッション重視からの脱却を
2014年2月5日
「冬の時代」を迎えた中国スポーツ用品市場
「冬の時代」を迎えた中国スポーツ用品市場
 新年快楽!中国では春節(旧正月)を迎え、本格的に新しい1年がスタートしました。日本では今月7日にロシアのソチで開幕する冬季オリンピックで盛り上がっていると思いますが、中国ではほとんどメディアでも話題にされていません。夏季大会では卓球やバドミントン、水泳の飛び込みなど金メダルが期待できる競技やスター選手がいますが、それが不在なのも不人気の一因だと思いますが、周りでも日本のようにレジャーとしてスキーやスケートに行くという声もほとんど聞きません。

 2008年の北京オリンピックで盛り上がった市民のスポーツ熱も昨今の大気汚染の影響もあるのか若干しぼんだイメージもあります。これに伴い、スポーツ用品市場もここ数年、伸び悩みと衰退が続き「冬の時代」を迎えています。

 12年の中国スポーツ用品市場は1,500億元(約2兆5,500億円)に迫る規模で、そのうちナイキとアディダスがそれぞれシェア12%前後で市場をリードしています。中国では日本や欧米などと違い、スポーツウェアやシューズを普段着やカジュアルファッションとして着用する傾向が強いため、素材や機能よりもファッション性やブランドが重視されています。そのためナイキやアディダスが高級ブランドとなり、李寧(Lining)、安踏(Anta)、360度などの中国系メーカーが若者や地方都市を中心に低価格ブランドとして広がるという構図になっています。

 こうした市場の特性を背景に、アディダスは奢侈品レベルからデザイナーとのコラボ、若者向けの低価格品まで幅広いラインナップを揃え、イメージキャラクターに芸能人を採用するなどファッションブランド路線を敷いています。一方、ナイキはあくまでもスポーツでの機能や卓越性を重視し、ブランド戦略も世界共通とし、イメージキャラクターも全て世界のトップアスリートを採用しています。

 ナイキ中国のマーチャンダイジングトレーニング部長のジョイス・リン氏によると、同社は中国内に展開する6,000以上の店舗のうち、直営店は20店のみであとはすべて代理店とのことです。これまでは代理店任せで商品を卸すだけで業績が上がる方式でしたが、各代理店での在庫がかさみ新たなオーダーが入らないという悪循環も顕在化しているため、現在は各店舗の販売実績や現地の消費者の好みも考慮しながら、取り扱い商品から陳列方法まで統一的に管理しています。

 同氏は、将来的に中国人のスポーツやフィットネスに対する認識向上や普及が進むことにより、スポーツ用品に対するニーズが単なるファッションからスポーツ性能や素材を求めるようになると予想しています。先日の全豪オープンの女子シングルスで優勝した李娜(リー・ナ)もナイキのイメージキャラクターの1人。低飛行が続くスポーツ用品市場でこうした変化をいかに取り込むのか、ナイキの今後の動向を注視したいと思います。

※会報誌(14年1・2月合併号)でナイキ中国のマーチャンダイジングトレーニング部長のジョイス・リン氏にスポーツ用品市場の動向と今後の趨勢、ならびに同社の中国戦略についてインタビューをしています。
【インタビュー】  中国ビジネス最前線 ~現地企業のキーパーソンに聞く~
  『スポーツの認識向上が急務、カジュアルブランドからの脱却を』
   ナイキの戦略から見る中国スポーツ用品市場の現状と展望
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