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【第110回】 浙江省第4位の都市・紹興の経済発展と消費
観光地のイメージ強い紹興、消費の現場は?
2014年2月26日
中国近代文学の父「魯迅」の生家は観光地に(浙江省・紹興)
中国近代文学の父「魯迅」の生家は観光地に(浙江省・紹興)
 都市別レポートの視察に浙江省・紹興を訪れました。紹興といえばまず「紹興酒」が頭に浮かびますが、それ以外にも中国近代文学の文豪・魯迅の生まれ故郷としても有名で、当時のままの生家や塾などが博物館となり、一帯が観光地化されています。

 紀元前6世紀後半の春秋戦国時代末に越王国の都となるなど、2500年以上もの長い歴史を持つ紹興には、街中に悠久の歴史を感じさせる水郷や橋などが点在しています。また、東晋時代に楷・行・草などの書体を完成させ、書聖と称された王羲之の所縁の地でもあり、彼の有名な書作品「蘭亭序」を書いた蘭亭もあります。

 歴史、芸術、文学、文化を色濃く感じさせる町並みは多くの観光客を魅了し、観光業も盛んなのですが、杭州に隣接し、大上海経済圏の一角として経済発展も目覚ましいものがあります。

 常住人口500万人強を擁する紹興の2012年GDPは3,620億元で、浙江省内では杭州、寧波、温州に続く第4位。1人当たりGDPも7万3,304元(約1万2,000米ドル)で同じく省内第4位。市内には国家級、省級を含む12の開発区があり、外資誘致にも積極的です。

 こうした経済基盤を背景に、消費の現場もさぞかし活発だろうと期待していましたが、それは裏切られる形になりました。市内で一番の繁華街である城市広場や解放南路沿いにはウォルマートに加え、華聯、国商、潤和などの老舗百貨店がありますが、いずれも若干古臭いイメージです。

 市中心部から北西へ15キロメートルほどの柯橋開発区周辺では、ユニクロが入居する万達広場や銀泰百貨がありますが、いずれも客の入りはまばら。唯一、銀泰百貨地下のスーパーの永輝超市が気を吐いているくらいでした。

 他都市と同じような客足を目にしたのは高新区近くの世茂広場です。パークソン(百盛)や仏系スーパーのAuchan(欧尚)があり、スーパーはたくさんの客で溢れていました。ただ、パークソンに隣接するモールでは、レストラン以外のテナントは客がまばらという状況でした。

 全国的にも売り上げが上位にランクインする高級百貨店の杭州大廈では、その年間売り上げの実に2割強を紹興人が占めるとも言われています。ただ、地元の商業施設を見る限りにおいては、そうした消費意欲や空気を感じることができず、魯迅旧居の観光客の数の多さとのコントラストが際立っていました。ぜいたく品購入はお隣の杭州まで出向けばいいからなのか、それとも百貨店やモールなどでの消費低迷が地方都市で如実に現れてきている現場を目にしたからなのか。GDP成長率などの経済指標では現れない消費現場の実態を垣間見た気がしてなりません。


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