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【第111回】 上海で過熱するタクシー配車アプリ競争
ネット2強がタクシー配車でバトル
2014年3月5日
上海の街角で最近よく目にする「微信支付」と「嘀嘀打車」の広告
上海の街角で最近よく目にする「微信支付」と「嘀嘀打車」の広告
 最近上海では朝夕の通勤ラッシュ時に、「空車」ランプが点灯しているタクシーが道端で手を挙げている客の目の前を無情にも通り過ぎる光景をよく目にします。怪訝そうな顔つきで怒りをあらわにする外国人もいるほど。これは、スマホのタクシー配車アプリが関係しています。「素通りタクシー」はすでにアプリ経由で予約済みだったということです。

 そのタクシー配車アプリですが、現在中国全土で「嘀嘀打車」と「快的打車」の2社がガチンコの勢力争いを繰り広げています。前者はインスタントメッセンジャーの「QQ」やスマホのチャットアプリの「微信(WeChat)」で有名な騰訊(テンセント)が、後者はネット通販の「淘宝」や「天猫」で有名な阿里巴巴(アリババ)がそれぞれ出資しています。

 中国ネット界の巨頭である両社がそれぞれのアプリ利用者増を目論み、広告宣伝やプロモーションに多くの資本を投下しています。その一つが、スマホ経由で決済(タクシー代支払い)すればキャッシュバックするというもの。嘀嘀打車がまず、「微信支付」で支払った場合は10元返金というサービスを打ち出しました。その後、快的打車が自身のグループ傘下にある「支付宝」で決済すれば11元返金と対抗。嘀嘀打車も負けじと12元を返金する策に乗り出すなど、競争はヒートアップするばかりです。優遇を受けるのはタクシー運転手も同じ。アプリ経由で客を乗せた場合、1日10回を限度に1乗客当たり10元のリベートが支払われます。

 これらのアプリは、タクシーを呼ぶ際に別途0~20元のチップを支払うかどうかを選ばせる仕組みになっており、通勤ラッシュや雨など天候が悪い日には特にチップが弾むそう。運転手にとってはリベートやチップが臨時収入となり、毎月2000~3000元の収入増になった人もいるということです。

 私もタクシー代10元をキャッシュバックしてほしいと思い、早速、微信支付で銀行カードを登録しようとしました。しかしながら、今のところ中国人の身分証明証番号が必須。外国人は使えないようです。最近、運転手からは「微信支付で支払うよね?」とよく聞かれますが、「現金で」と答えた瞬間にあからさまに不満そうな顔をされるケースもあります。

 また、アプリで予約した際に自分の居場所はGPSで運転手に伝わるのですが、正確な位置を伝えるには必ず双方が電話で確認しなくてはならないため、赴任したばかりのクライアントは結局使えないと嘆いていました。こうした外国人やスマホを使いこなせない高齢者がタクシーを利用できない状況を問題視した上海市政府は、3月1日より午前7時半~9時半と午後4時半~6時半の通勤ラッシュ時はアプリ利用を禁止しました。

 「上に政策あれば、下に対策あり」の中国で、今後どのような展開を見せるのか。この上下のガチンコ勝負も注意深くウォッチしていきたいと思います。

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