オムニチャネル化を一気に進める蘇寧（無錫蘇寧広場店）

　会報誌3月号でも取り上げ、最近ネット業界で話題を独占している「O2O（オンライン・ツー・オフライン）」。その日本でのトレンドについて、会員企業でもある富士ソフトの方からお話をお伺いしました。

　まず「O2O」の定義ですが、これはメールやネットなどオンラインのツールから実店舗（オフライン）へ客を誘導すること。最近ではLINEの公式アカウントによる情報発信もそれにあたるということです。その後、O2Oは「クロスチャネル」へと進化し、ネットやリアルの様々なチャネルで商品の購入や受け取りができるようになりました。例えば、ネットで購入した物を自宅近くのコンビニで受け取るといったものです。

　最近ではそれが「オムニチャネル」に進化しています。「オムニ（すべての意）」の流通チャネルが同期化された状態を指します。値段がネットもリアルも同じになるだけでなく、実店舗でのPOSや在庫がネットでも同時に反映されるような仕組みだそうです。

　日本の流通業界では、オムニチャネル化をいかに進めるかが焦点になっているそうですが、中国では家電量販大手の蘇寧雲商集団が一足先にそれを実践しています。

　江蘇省・無錫に2013年9月にオープンした「無錫蘇寧広場」。巨大な家電販売スペースには「全店無料WIFI接続歓迎体験」という案内がありますが、これはただの無償ネット接続サービスではありません。店舗内で見て触って確かめた商品をネットからそのままオーダーできるという最先端のO2Oを実践しているのです。

　仕組みはこうです。まずはスマートフォン上で蘇寧のアプリをダウンロード。そのスマホを片手に実店舗へ行き、気に入った商品があれば値札の横にあるQRコードをアプリ経由で読み取ります。すると購入画面が現れ、その場で注文。支払いは蘇寧が展開する決済サービス「易付宝」経由で行えます。

　このモデルを可能にしたのが、ネットとリアルでの「同一価格」の提供です。従来は、同じ商品でもネット上の価格の方が安かったため、実店舗への客足が鈍り、売り上げが減るなどの影響もありました。しかし、価格統一により様々な購入方式が生まれ、信頼性のある商品は時間節約のためにもネット上で購入、使い勝手などを試したい大型家電は実店舗に行き、確かめた後にスマホ経由で購入……。まさにネットとリアルの融合です。

　実店舗には、アプリのダウンロードと設定を行ってくれる特設コーナーがあるなど、至れり尽くせり。店員が使い方を説明するなど、積極的な姿勢が伺えます。業界の常識やタブーにとらわれず、常に時代の最先端を行こうとする蘇寧。今後のO2Oビジネスのロールモデルになっていくかもしれません。 

※会報誌（14年3月号）の巻頭特集で「右肩上がりのO2O市場、スマホ普及が後押し　中国O2Oビジネス最前線」を取扱いました。

ウェブサイトでも随時更新していきますのでぜひご覧ください。

（詳細）http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Periodical

※会報誌（13年12月号）の第2特集で「チャイナ・リサーチ　業界＆企業分析　　『”三本の矢”経営で「中国版ウォルマート＋アマゾン」目指す』　南京発の蘇寧雲商集団、ネット総合企業への躍進なるか」を取扱っています。下記リンク先よりウェブサイトでもご覧いただけます。

南京発の蘇寧、ネット総合企業への脱皮図る（1）

中国チェーン企業No.1の蘇寧雲商集団

http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=778

南京発の蘇寧、ネット総合企業への脱皮図る（2）

蘇寧が進めたEC事業と価格戦の洗礼

http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=779

南京発の蘇寧、ネット総合企業への脱皮図る（3）

ネットとリアルで同一価格、蘇寧の挑戦

http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=780

南京発の蘇寧、ネット総合企業への脱皮図る（4）

動画サイト買収から不動産開発まで行う蘇寧

http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=781