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【第121回】 開封で感じた内陸市場の攻略法
観光需要が中心、河南省の古都・開封
2014年5月14日
宋時代の商店街を再現した「宋都御街」
宋時代の商店街を再現した「宋都御街」
 河南省・開封市を視察に訪れました。省都・鄭州から東へ約70キロメートル。開封は西安、洛陽、南京、北京、杭州、安陽、鄭州、大同と並び中国九大古都のひとつ。北宋(960~1127年)の時代には「東京」の名称で首都として栄え、人口が150万人に達し当時世界最大の都市でした。当時の開封の都城内外の発展ぶりを描いた有名な「清明上河図」を代表に、絵画、陶磁器、詩(宋詞)など庶民文化が発展した時期でもあります。

 その清明上河図の世界を模して再現したテーマパーク「清明上河園」のほかに、空海が寄居した大相国寺や北宋時代から現存する鉄塔など数多くの歴史的建造物や遺跡が残っており、観光都市としても国内外から4000万人(12年)を超える多くの観光客を魅了しています。

 開封の常住人口は460万人強(10年)で、中国では中規模クラス。実際に町中や繁華街の様子も、鄭州や洛陽で見たような現代的な華やかさはなく、古風な建物も散在し、古き良き古都の面影を残しています。

 一番の繁華街といえば市中心部を南北に走る中山路周辺。観光地の龍亭公園から南へ約400メートルの道筋に、宋時代の商店街を再現した「宋都御街」があり、主に観光客向けのレストランやお土産屋などが密集しています。その先にいずれも大商集団傘下の千盛百貨と新瑪特(New Mart)ショッピングモールがあり、迪臣世紀広場とともに商圏を形成しています。

 そこから南に向かう中山路沿いには地元系の商店が軒を並べています。夜になると数多くの夜市(夜店)で埋め尽くされる鼓楼広場周辺では、地上と地下で商店街が広がっており、夜市を中心に多くの観光客で連日賑わっています。

 一方、市政府移設に伴い新しく都市開発が進む新区には、高層オフィスビルやマンションが立ち並び、ショッピングモールの開元広場には千盛生活広場や大商超市(スーパー)が入居し、周辺の新興住宅地の住民のニーズを一手に引き受けています。特に大商超市では平日の夜の時間帯にもかかわらず、食品を求め多くの客で賑わっており、観光地としての旧市街と居住地としての新区(郊外)という商圏の区分が進んでいることが伺えました。

 観光以外の消費市場としてはまだ「これから」の印象は拭えませんでしたが、新区の開元広場のスーパーで目にした光景は、今後の潜在的な爆発力を感じるには十分な活気でした。しかしスーパー内でも日本の商品やブランドをほとんど目にすることはなく、河南省の内陸地方都市にはまだ攻め切れていない日本企業の苦悩が推し量られます。このような状況のなか、大連を本拠とする大商集団がこれほどまでに開封市場に浸透しているのには驚きを感じるとともに、そのすでに構築された販売チャネルをうまく活用する戦略及び関係作りの策を講じるべきではと思いました。


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