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【第123回】 アリババの米上場で競争激化する中国ネット業界
FB超えなるか、アリババが米上場へ
2014年5月28日
昨年5月の淘宝10周年記念式典でCEO引退したはずの馬雲氏だが・・・
昨年5月の淘宝10周年記念式典でCEO引退したはずの馬雲氏だが・・・
 中国電子商取引最大手アリババ(阿里巴巴)のアメリカ市場での新規株式公開(IPO)がいよいよ本格始動しました。今年5月6日に米証券取引委員会(SEC)に株式公開を申請したアリババの上場は、調達額が150億ドルを超えるとも予想されており、2012年に上場した米フェイスブックの160億ドルを越え、ハイテク関連企業として過去最大のIPOとなる可能性があるとも言われています。

 日本ではそのアリババの株式の34.4%をソフトバンクが所有していることから、今回の上場が実現すれば、その持ち株価値が実に6兆円になるのではと話題になっています。

 アリババの本社は上海から南西へ約180kmの位置にある浙江省の省都・杭州にあります。地元の高校で英語教師をしていた創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が翻訳会社で起業し、仕事の関係でアメリカに行った際に出会ったのがインターネットでした。帰国後、中国の会社を英語で世界中の人に知ってもらいたいという思いでインターネット上での中国版「イエローページ」を立ち上げたのがきっかけです。

 1999年開設のB2Bサイト「阿里巴巴」から小売分野にも進出し、2003年にはC2Cの「淘宝網(タオバオ)」、08年にB2Cの「天猫(Tモール)」、10年に共同購入の「聚画算」をそれぞれスタートさせ、中国ネット通販市場の醸成と発展に大きく寄与したことは言うまでもありません。

 13年のインターネット通販(小売)事業全体の流通総額は、2480億米ドルに達しましたが、これはアマゾン(約860億米ドル。12年)やeBay(約678億米ドル。12年)を大きく上回り、世界最大規模です。

 昨年5月に杭州で開かれた淘宝10周年記念式典で、約4万人のグループ社員及び関係者を前にCEO職を退いた馬氏ですが、最近また頻繁にメディアを中心に露出が増えています。今回の米上場を控え創業者としてのPRを狙いとしている面もあると思いますが、それとは別に単月当たりのアクティブユーザー数が約3億5000万人という強力なコミュニケーションツールであるチャットアプリ「微信(WeChat)」を有するライバル企業・テンセント(騰訊)の存在が大きいのではと思います。内部会合の場でも馬氏自ら、テンセントを意識した敵対心溢れる発言がされたようで、今後ますます両社の覇権争いが激化する様相を帯びています。

 そのテンセント、今年3月に株式約15%を出資したB2Cサイト業界2位の「京東商城」が5月22日に一足先に米ナスダックに上場しました。資金やシェア面などまだアリババとの差は明確ですが、馬氏も引退してうかうかとしていられないことでしょう。上場により潤沢な資金を手にした馬氏が次にどんな一手を打つのか、調達額以上に注目していきたいと思います。

※会報誌「チャイナ・マーケット・インサイト」の最新号(14年5月号)で、アリババの企業分析をしました。同社の売上高や流通総額(取引高)、純利益率、従業員構成、テンセントとの真っ向勝負など、さらに深く掘り下げてレポートしています。詳細は下記リンク先から。
(詳細)http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Periodical

※下記サイト上でもご覧いただけます。(『中国マーケティング・EC会員』IDにてログインの上ご覧ください。)

アリババが米上場へ、ネット業界での競争激化(1)
アリババのECは小売事業が中心
http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=984

アリババが米上場へ、ネット業界での競争激化(2)
アリババの高い純利益率
http://www.cast-marketing.com/index.php?Mod=Marketing&Cmd=DataList&Action=Detail&MRid=985


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