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【第238回】 ドライバーはバラ色とは限らず
成長する配車アプリ、その実態は?
2016年9月28日
 米系ウーバー(UBER)を代表とする「白タク」ともいえる配車アプリの普及に対して“見て見ぬふり”で容認していた中国政府ですが、16年7月に、いよいよ合法化に踏み切ると発表。中国ネット検索最大手の百度やトヨタ、広汽自動車などから提携や出資を受けたウーバーが、この合法化の波に乗って一気に勢力を拡大するかと思った矢先、今度は嘀嘀出行がウーバーの中国部門を買収すると発表しました。

 配車アプリの普及は、消費者サイドから見れば、移動手段の多様化やアプリ間の競争による料金の値下げ、さらには接客態度の改善など、ハード・ソフト両面からいい事づくしなのですが、運営側はそれほど“バラ色”ではないようです。今回の買収劇の裏側には、結局はアプリ各社が何十億と資金を投入してきたにもかかわらず、未だに事業は黒字化していないという事情もあったようです。

 先日、上海で久しぶりにウーバーを利用しました。ウーバーは時間帯によっては優待割引などもありすごく安くなる場合もあるのですが、ラッシュ時などの渋滞では逆に上乗せ料金などが発生しタクシーよりも高くなることもあるので、最近はタクシー配車アプリのアリババ・テンセント系の「嘀嘀出行」のほうをよく利用していました。

 久々のウーバーは上海汽車の栄威(ROEWE)のセダン。ドライバーは35歳前後の上海長興島出身の男性でした。車内は清潔で接客も丁寧、改めてタクシーよりも居心地の良さを実感しました。

 「最近は取り締まり厳しくないの?」と聞いたところ、すごく厳しいとの返答。半年ごとに政府への申請が必要だが、彼はレンタカー会社から1日270元で車を借りてやっているので問題ないとのこと(タクシーの場合は、大体1日350元なのでそれよりは割安になっているらしいです)。

 売上は1日500〜600元程度にしかならないよう。ウーバーの普及当初は1日1000元を超えるのもザラでしたが、新規参入が増え競争が激しくなっているため、段々と旨味がなくなっているそうです。

 また、朝7時から10時と午後4時から8時の通勤ラッシュ時をメインに稼動。この時間帯であればウーバーの運営会社から別途ボーナスが出るからで、それ以外の時間帯は道端に車を停めてのんびり。ウーバーだけではオーダーが少ないので、滴滴も併用せざるをえない状況だとも話していました。

 外から見ると、出資や買収など華々しい世界のように見える配車アプリ。それもこうした厳しい現実と向き合いながら黙々と日々車を運転するドライバーあって成り立っているのだと改めて気付かされました。 


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