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【第272回】 潮汕エリアはやっぱり「潮菜」?
華僑の故郷、広東省の潮州
2017年5月31日
 端午節の連休を利用し、広東省の「潮汕」地方に行きました。潮汕とは、広東省の東部、福建省にほぼ近い「潮州」と「汕頭」の頭文字を取った略称。この2都市に「掲陽」を加えたエリアを指しています。空港も掲陽潮汕国際機場という名で、ちょうどこの3都市の中間に位置しています。

 中国人が「潮州」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは潮州菜(料理)でしょう。全国各地で「潮菜」の看板を出すレストランを目にするほどメジャーな広東料理の一つ。薄い醤油ベースの滷水(出汁)でアヒルやガチョウ肉を煮込んだ「滷味」、カニやエビをふんだんに煮込んだ砂鍋粥、さらには最近人気の海鮮蒸し(蒸気火鍋)などが有名です。上海では洗練された店構えの店も多く、高級なイメージすらあります。

 しかし、いざ潮州に足を踏み入れると、そのイメージとは異なる世界が広がっていました。滷味や砂鍋粥、海鮮蒸気火鍋などの看板はほぼ皆無。上海で目にするような高級レストランはほとんどなく、“パパママ”的な個人経営の路面店が街中を覆っています。

 飲食に限らず、アパレルや宝飾品など路面店が中心。「右一城」という若者向けの小物や飲食をメインとした小規模なモールが一軒あるのみでした。タイ系の卜蜂蓮花(LOTUS)や台湾系の大潤発など総合スーパーがありましたが、休日の午後でもほぼガラガラの状態。地元の消費はほとんどがその他大勢の路面店に支えられているような印象を受けました。

 それもそのはず。常住人口はわずか264.05万人(15年末)。日本の都市と比べれば多いですが、中国では小都市といえる規模です。GDPも976.83億元(16年)で広東省21都市のうち第18位。1人当たりGDPも3万6994元で第14位に過ぎません(ちなみにトップの広州はそれぞれ1兆9610.94億元、14万5254元)。

 高級レストランのイメージを持って訪れた潮州。そうしたレストランのルーツとなるお店があるかと思っていたのですが、期待外れの結果に終わりました。一方、“華僑之郷”(華僑の郷土)とも称される潮州。200万人にも達するとされる華僑人口ですが、外地での「潮州」イメージもこうした華僑が作り出したものなのかもしれません。


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