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【第275回】 のどかな空気が流れる広東省の街
モール進出で汕頭の消費スタイル変わるか
2017年6月21日
 広東省・汕頭。日本では地元の方言風に「スワトウ」と称される、福建省にほど近い広東省の港町です。1980年代初めに鄧小平が推進した改革開放政策で、深センや珠海とともに経済特区としてその名を連ねるも、その後の発展は鳴かず飛ばず。2016年のGDPは2080.54億元、省内都市別ランキングでも第12位と、経済成長の波に乗れなかったのが見て取れます。

 人口は557.92万人と中国では中規模クラスの汕頭。端午節の連休ながら、町中は人通りや車の数も多くなく、どこかおとなしい印象です。有名な観光やレジャースポットもなく、交通網もそれほど便利でないからか、市外からの観光客はそれほど多くないイメージでした。

 注目の消費スポットは、長平路と金環南路が交差する場所に15年9月にオープンした「蘇寧広場」です。家電量販チェーンの蘇寧が運営するモールで、家電売場も併設。長平路を挟んだ向かいの建物も、元々のパークソン(百盛)とウォルマートから華潤グループの「万象城」へとリニューアル中。五つ星のシェラトンホテルも傍にあり、周辺一帯が街の中心として再開発されています。

 郊外型モールとしては、ここから東に約5km離れたモール「星湖商業城」が注目されます。地場系不動産デベロッパーの合信置業が13年にオープンした同モールには、ウォルマートやスターバックス、ZARAのほか傘下のOYSHOやMassimo Duttiも出店しています。

 スーパーではタイ系の卜蜂蓮花(Lotus)が存在感を発揮。04年と早くから出店した背景があるほかに、汕頭出身の潮州系タイ人、謝家(チエンワノン家)が基礎を作ったコングロマリット(複合企業)のCP(チャロン・ポカパン)グループに愛着心があるからでしょうか。また、緑色の店構えが際立つ地場系コンビニチェーン店「爽客」も店舗網を急拡大しています。

 端午節の連休ながら、他都市で見られるような客が殺到する光景には結局一度も遭遇しませんでした。一方で、圧倒的多数の“パパママ”的な個人経営店がひしめく市内の様子を眺めていると、そうした古くからの行きつけの店舗で日常のニーズは満たされているのかもしれません。

 経済特区として改革開放の先鋒役を期待されながら、一地方都市としてのどかな空気が流れる汕頭。18年オープン予定の万象城がこうした空気を一変できるのか、注目です。



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