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“網紅”経済の視点で見る中国の消費アップグレード (1)
「喜茶」が火をつけた行列ブーム
2017年6月19日

 

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上海「喜茶」の前にできた長蛇の列
 2016年3月、上海でも屈指の賑わいを見せる人民広場の人気商業施設「ラッフルズシティ(来福士購物中心)」では、中庭に人が溢れ、長い行列が幾重にも重なっていた。その行列の先にあるのは、「喜茶」という名の茶飲料専門店。

 行列を作る人の数は数百人にも及び、1杯のアイスティーを手に入れるため、少なくとも2~3時間、ひどい時には6~7時間も並ぶこともある。 客の90以上は20歳前後の若者層で、学生やホワイトカラーが主流。また、女性が70~80%を占め、2~3人のグループが多くを占めている。

 同じ頃、ラッフルズシティの向かい側の歩道にも、北京発の伝統菓子店「鮑師傅」の前に長い行列ができていた。 行列は九江路まで約200メートルも伸び、こちらも数時間並ばなければ購入できない様子だった。

 やっとの思いで「喜茶」や「鮑師傅」を手に入れた消費者は、例外なく、すぐにスマホで戦利品を撮影、微信(ウィーチャット)や微博(ウェイボー)などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でシェアして自慢する。この結果、「喜茶」と「鮑師傅」はSNSを通して瞬く間に有名になり、上海市民に「人民広場の二巨頭」と称されるようになった。

 さらに多くの消費者が行列に加わるようにもなり、ダフ屋や行列代行サービスまで出現。元々1杯20元前後の喜茶だが、ダフ屋によっては100元を提示する者も。また、行列代行サービスの場合、最初の1時間が33元、その後30分毎に10元が加算される仕組みになっているようで、売値の相場は100~150元程度にまで跳ね上がっているという。

 喜茶ではダフ屋を防止するべく制限措置を採用。購入制限は当初6杯までだったのが、その後3杯、現在は2杯と徐々に厳格化。さらには実名制まで導入するに至っている。また鮑師傅も購入は1日1回までを原則としている。 まさに「網紅(ネットで人気を集めるインフルエンサー)」の市場起爆力を垣間見ることができる現象といえる。

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北京発の伝統菓子店「鮑師傅」が上海で人気爆発
 利用者が9億3780万人(17年3月末時点)に達し、メディアとしての情報発信力や影響力が日増しに高まっている微信。その影響力を支えるのが、ユーザー同士で近況(テキスト、写真、動画)やリンク先をシェアする「朋友圈(モーメンツ)」なのだが、この朋友圈を通して、ここ数年、上海でも数多くの「網紅グルメ」が誕生している。

 少し前には、鮮肉月餅や葱油餅、咸蛋黄肉松青団(アヒルの塩卵と肉そぼろ入りヨモギ団子)、 爆醤チーズタルト、WIYF(What Is Your Flavor?)アイスクリームなどが話題に。また現在は喜茶や鮑師傅が大人気なのだが、続々と登場する網紅グルメが、消費者の行列に並んででも買いたい(食したい)心理を刺激している。

 では、この網紅グルメとして人気となるのはどんな商品なのか?その共通点は?網紅の社会的意味とは何か?以下では、まず今一番ホットな「喜茶」にスポットを当て、網紅グルメの詳細な分析を行っていくことにしよう。

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