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中国ビッグデータ業界をリードするアリババ(写真:深セン宝安国際空港) |
会報誌6月号の巻頭特集では中国ビッグデータ業界を取り上げました。日本をはじめ世界中でビッグデータやAI(人工知能)、自動運転などのキーワードが飛び交うようになり、次世代の“金のなる木”として注目されています。中国でも同様に、「大数据」と称されるビッグデータ、ネット業界を中心に凄まじいスピード感でビジネスや日常生活における応用が始まっています。
中国でビッグデータの存在を強く意識するようになったきっかけは「百度地図」。中国各地で車を運転する際に、必ず利用する「地図+ナビゲーション」アプリです。
ある日突然、目的地を設定してルート検索した際に、それまでは1つの選択肢しかなかったのが、2〜3個の別ルートが表示されるようになりました。到達するまでの最短時間、距離、高速料金などの基準があり、それぞれ途中の渋滞状況が赤や黄、緑色で表示されます。ナビ開始後に表示される到達予想時刻も、道路状況や運転速度により刻々と変化するのですが、最初に示された時間との誤差はそれほど大きくはありません。
これらは日本のカーナビでもずっと前からある機能ですし、グーグルマップにも標準搭載されています。日本ではほとんど運転することがないので、正確に比較はできないのですが、百度地図による渋滞情報や最速ルートなどはかなり精度が高くなっていると感じます。
その理由は、私同様にオンタイムで地図アプリを利用するその他大勢のスマホユーザーからの情報が常時サーバーに集められ、瞬時に計算されたうえで、リアルタイムに反映されているからでしょう。最近はタクシーの運転手ですら、ナビに表示されたルートを運転しながら、「これが一番確実」と言うくらいです。
地図アプリに限らず、多くの生活シーンでスマホが欠かせなくなった中国。約7億人のスマホユーザーがやり取りする金銭や個人のありとあらゆる情報が、どこかのサーバーに吸い上げられ、管理・監視されているという懸念があるのも事実です。
しかし、ビッグデータは文字通り、データ量がすべて。いくらデータを“調理(分析)”するアルゴリズムを磨いても、それを活用するための“食材(データ)”がないと何の意味もなく、同産業の発展は見込めないでしょう。その意味からも、膨大な量のデータを収集、なおかつ管理できる中国は、次世代のビジネス環境を牛耳る可能性も秘めており、脅威に感じます。