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【第390回】 宅配が当たり前の中国スーパー業界
盒馬で結局一番売れている商品は??
2019年10月16日
 会報誌9月号で取り上げた中国スーパー業界の動向。カルフールやウォルマートなどGMS(総合スーパー)各社はことごとく業績が低迷。上海だけでなく各地の店舗に行っても、どこも以前のような賑わいはなく、ほぼ“ガラガラ”といってもいいほどの状態です。では、中国の消費者は一体どこで日常の食材や日用品を購入しているのか?

 上海にいる人なら、それは「盒馬鮮生」と答えるでしょう。アリババ系の生鮮ネットスーパーで、店舗を倉庫代わりとしても使い、かつ食材をその場で調理して食べられる「グローサラント」業態としても人気。これまでこのメルマガでも何度も紹介してきましたが、まさにOMO(Online Merged with Offline)概念の「新小売」スーパー筆頭格です。

 この盒馬。2018年の売上が140億元で、前年比なんと300%増と急成長。全国20都市に150店以上展開。1号店である上海金橋店は、年間売上約2.5億元、坪売上(一坪当たりの売上)も5.6万元で、これは従来型スーパーと比べて5倍以上とされています。

 巷では盒馬の配送範囲(半径約3 km)内にある、「盒区房」と称されるマンション価格が上昇していると言われるほど。確かに私も昨年3月に浦東に引っ越した際には、まず盒馬が配送しくれるかどうかを確認したほどです。

 我が家の食卓はほぼ盒馬から宅配される食品のみ。店舗に出向くことはなく、最近はコンビニすら行きません。実際に盒馬の人気が出始めた当初は物珍しさで店舗に出向き、ロブスターやシャコなどをイートインで食べましたが、それも1、2回限り。もちろん中国人も頻繁にこうした海鮮類を食べることはなく、結局のところ、盒馬での売上の7割は野菜を中心とした生鮮品とのこと。

 そうすると、いよいよ勝負はいかに野菜や肉を売るかに。さらにそもそも宅配してもらうわけなので「店舗いる?」という発想が…。その隙間を巧みについてきたのが「叮咚(ディンドン)」や「美団買菜」など。中国で「前置倉庫」と呼ばれる簡易でかつ店舗ではない配送倉庫を張り巡らせた、宅配に特化したネットスーパーです。

 宅配が当たり前になりつつある中国スーパー業。宅配にも対応する居住エリア隣接型の生鮮ミニスーパーも続々と誕生。大手GMS各社もそれに追随してはいるものの、リアル(実店舗)が不要となりつつある中国のスーパー業は今後どのような未来があるのか。またこれについても後日考察したいと思います。
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