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高級化が進む中国ビール市場 (1)
クラフトビールの人気が急上昇
2019年12月10日
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中国でクラフトビールの人気が急上昇している(写真:盒馬鮮生のクラフトビールバー)
  中国は世界一のビール生産及び消費量を誇る。一方、一人当たりのビール消費は36リットル。ビール消費大国のチェコやドイツには遠く及ばないが、世界平均は上回っている。

  近年来、中国における消費者層の構造や好み、消費観念の変化、少々値段が高くてもより良いモノを求める「消費昇級(アップグレード)」トレンドなどに伴い、中国のビール市場にも変化が起こっている。低価格帯ビールの市場シェアは年々減少し、中高級ビールのシェアが急成長している。

  市場調査機関ユーロモニターの統計によると、中国の中高級ビール(ユーロモニターの定義:末端価格7元/リットル以上)のシェアが2011年の38.4%から、17年には60.9%と大きく成長を遂げているという。(図1:中国ビール市場のシェア構成)
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  またクラフトビールも15年から急成長を続けている。16年には中国クラフトビールのトップブランド「Panda Brew(熊猫精醸・パンダブリュー)」や「Master Gao(高大師・マスターガオ)」などが相次いでベンチャー投資の対象となった。

  17年には「酒花児」が数千万元のベンチャーキャピタル(A+ラウンド)で資本を調達。「開巴」や「Boxing Cat(拳撃猫・ボクシングキャット)」はビールメーカー大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(中国名:百威英博 ※以下、インベブ)に買収された。

  現在、中国のクラフトビール消費は市場全体の1%程度に過ぎないが、その発展動向に高い注目が集まっている。

ビール生産・販売は減少傾向に

  中国は2002年にアメリカを超え、世界一のビール生産大国となった。以来、世界一の地位を保ち続けている。13年には、生産量が5061万キロリットル、消費量も5054万キロリットルとピークに達した。

  しかしその後、アルコール飲料の多様化や消費のアップグレードに伴い、中国のビール生産及び消費は、減少傾向となっている。17年の生産量は4401万キロリットル、消費も4437万キロリットルにまで落ち込んだ。13年から17年までの4年で、ビールの生産量は15%、消費量も12.2%減少している。(図2:中国のビール生産量及びその成長率の推移)(表1:2006・2013・2017年のビール及びその他酒類の消費データ比較)
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  この期間中、酒類の生産・販売量は成長を続けていたが、総生産量にビールが占める割合は、17年には72.1%となり、13年比で4.2%減少。ビールの割合が最も高かった06年の87%に比べると、14.9%も減少した計算となる。

  ビールの消費減少の背景には、酒気帯び運転の罰則強化や八項規定(12年12月に公布された政府関連業務の風紀規律改善に関する八項の規定で、通常「ぜいたく禁止令」とも称される)、露天串焼き店の撤去など、政府の政策や措置の影響が少なからずあるとされている。

  また健康意識の高まりや消費構造の変化に伴い、消費者の飲酒傾向が大量飲酒からクオリティ重視へと変化したこと、カクテルなどの代替品の増加により、若年消費者層がビールを飲まなくなっていることなども理由として考えられる。

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