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従業員も「シェア」する時代到来か??
異業種間の「スタッフシェア」で危機回避!!
2020年4月8日
 新型コロナウイルスが変えた中国消費。外出制限で日々の食材入手に困った中国消費者の“救世主”として、生鮮EC(ネットスーパー)が急成長したと前号で述べました。

 特に自宅待機(隔離)が余儀なくされた期間は、注文が殺到。一方で、ネットスーパーの要である配達(デリバリー)が、ちょうど春節休暇と重なってしまい、配達スタッフの多くが実家へ帰省している状況でした。

 特に深刻だったのが、アリババ系の盒馬。毎朝の開店とともにスマホアプリを立ち上げ、食材を選び、デリバリーを「予約」するユーザーが続出。一日分の配達予約があっという間に満杯になるほどでした。

 こうした問題を解決するためにネットスーパー各社がとった対策が「スタッフシェア(派遣)」と「デリバリーの多様化」です。

 スタッフシェアとは、新型コロナで最も深刻な影響が出た外食業界から社員を派遣してもらうというもの。ちなみに今年の春節(旧正月)期間は、ほとんどの飲食店が大幅な赤字となり、業界全体の損失が5,000億元超だったという試算もあります。人気の四川火鍋チェーン店「海底捞」は、1月26日からの中国国内全店舗の営業停止により、損失は50億元に達したとのこと。

 このように赤字に苦しむ外食業界と、人手不足に悩むネットスーパーや出前(外売)各社。双方の利害が合致して突如生まれた発想が、「スタッフを共有しましょう」という施策です。

 提案したのは盒馬のほうから。2月3日以降、雲海肴、西貝、望湘園など大手レストランチェーンと契約し、自宅待機となった従業員を派遣。同月16日時点ですでに2,500名超のシェアスタッフが、盒馬店内でパッキングや仕分けなどの単純業務に従事。賃金は盒馬負担で、実際の給付は各飲食店からというシステムになっているようです。

 他社もこの動きに追随。出前アプリの餓了么、毎日優鮮、京東系スーパーの7FRESH、蘇寧+カルフール、ウォルマートなども業界を跨いでスタッフを共有するようになりました。

 こうしたスタッフシェアは新型コロナ禍という緊急事態だからこそ“成り立つ”施策でしょう。しかし、アリババがすでに「藍海」という従業員シェアのプラットフォームをリリースしており、もしかしたら収束後も継続するかもしれません。中国での雇用や人材管理が「変革」されるのか…。(※デリバリーの多様化については次号でお伝えします。)
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