前置倉庫型ネットスーパー「毎日優鮮」の敗因

2023年2月15日更新

「前置倉庫」型ネットスーパーの元祖「毎日優鮮（ミスフレッシュ）」

　ネットスーパーが普及し、生鮮品をスマホで購入するのがもはや当たり前となった上海のライフスタイル。昨年の都市封鎖（ロックダウン）ではネットスーパーも閉鎖され、改めて自宅まで届けてもらえるありがたみを実感しました。

　日本で中国のネットスーパーといえば、アリババの盒馬（フーマー）が最も有名だと思います。しかし上海では、フーマーとともに「叮咚買菜」（ディンドン）も人気があります。ただ叮咚はネット宅配専用の無店舗倉庫型の「ダークストア」なのであまり目立たちません。中国で「前置倉庫」と呼ばれる小規模の配送センターを住宅街の一角に数多く設置し、注文に応じて素早く届けるモデルで急成長しました。

　この「前置倉庫」型ネットスーパーで、叮咚とともに知名度が高いのが「毎日優鮮（ミスフレッシュ）」。今となっては、知名度が“高かった”といったほうが正しいですが、両社ともに2021年6月に前後して米株式市場に上場するなど、前置倉庫型が全盛期を迎えていました。

　しかし実際には、毎日優鮮は赤字が続き、株価も大幅に下落。最終的には売上の97％を占めていたデリバリー業務を、上海のロックダウンが明けた2022年7月に突如停止すると発表し、現在も運営停止の状態が続いています。

　前置倉庫型の問題について議論されるなか、配送スピードと充実した商品の取り揃えを追求するうえで、コストとのバランスを取るのが難しくなっていたと指摘されています。配送スピードをはやめようとすれば、デリバリースタッフの増員が必要です。またSKU数を増やそうとすれば、倉庫面積も拡大しないといけません。そうすると当然、人件費や賃料面で負担が増し、結果的に利益を生むことが難しくなります。

　中国の東北証券が生鮮ECの前置倉庫に関して行った分析を参考にしましょう。ここでは商品を産地から前置倉庫に運ぶまでの輸送コストは一旦考慮せず、300平方メートルの標準的な前置倉庫が前提となっています。

　客単価60元で、1日の平均受注件数600～1,400件として計算すると、注文１件あたりのコスト（CPO：Cost per Order）は10～13元。これは従来型のEコマースの約2〜3倍で、生協のようなコミュニティ単位の社区共同購入の6倍に当たります。

　実際に毎日優鮮の目論見書によると、2021年第3四半期におけるCPOは22.2元で、同じく前置倉庫型の叮咚の17.7元を大きく上回っていました。

　高コスト構造で赤字経営が続いていた毎日優鮮。小さな倉庫で小回りが効くがゆえに急拡大しながら、小さいがゆえに結局は自分の首を締める結果となった…。一時期は一斉を風靡していた前置倉庫モデルですが、アフターゼロコロナとなったいま、「ダーク」ではなく「ブライト」な店舗がより求められるかもしれません。

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