会報誌2023年3月号(vol. 102)の巻頭特集では、中国消費の主役に躍り出る「Z世代」を取り上げました。中国で1995~2009年生まれの若者を指すZ世代。人口は約2億6,000万人に上り、今後、中国消費の重要な牽引役になると予想されています。
彼らの消費潜在力は2021年時点で約5兆元ですが、2035年には16兆元に達するとも見込まれています。なかでも年長の「95後」(1995~1999年生まれ)世代は、今年24〜28歳で、新社会人から中堅社員になる段階。すでに一定の消費力をつけはじめています。
それに続く「00後」(2000年以降生まれ)世代は、まだ学生が中心ですが、消費マインドが徐々に芽生え始めています。
Z世代の多くは一人っ子で、核家族がメイン。中国経済が最も急成長した時期に生まれ育ち、恵まれた環境にある世代といえるでしょう。好きなモノやカルチャーは手の届かない夢ではなく、すべてが手を伸ばせば届くところにあります。
生まれた時からインターネットやインスタントメッセンジャー、スマートフォン(スマホ)、タブレットなどのハイテク技術やIT製品に囲まれて育っているのも、彼らの特徴を形作っています。
インターネットだけでなく、ソーシャル(SNS)にもネイティブといわれているZ世代。彼らは地理的な制約を越え、バーチャルコミュニティの中でさえも、同じ興味や趣味を持つ仲間と繋がり、中国で「圏層」と呼ばれる同人的なサークル(ネットを含めた繋がりグループ)を構成しています。
多様なカルチャーや思想に触れる機会に恵まれた彼らは、異なるカルチャーに対する受容度が高く、またユニークな発想力も併せ持っています。Z世代の多くは、さまざまな方法で自身の観点や感情を表現したり、新鮮な体験やトレンドを追求することを好みます。
熱心に社交に取り組みつつも、何かを盲目的に追随したり、自分を曲げたりすることはしない。あくまで自分の興味や価値観に忠実で、バーチャルコミュニティのなかでも、同じ興味や趣味を共有する仲間を見つけ出すことに長け、そして交流しています。
近年、多くの企業が注目する若いZ世代。彼らの消費は今後、新たな“ブルーオーシャン”を生み出す可能性も秘めています。彼らの消費性向やトレンドを把握することは、今後10年における中国事業発展のチャンスを掴み取ることに繋がるともいえるでしょう。
そこで今号では、中国Z世代の特徴や嗜好、消費行動などについて、生育環境からネット利用状況、興味・趣味、ネット通販やSNSなどの視点から調査・分析し、特に家電、スマホ・デジタル製品、スキンケア、IP(キャラクターなど知的財産)業界にフォーカスしてレポートしています。
次に、中国でのマーケティングでますます重要性を増すKOLの活用について特集しました。目まぐるしく変化を繰り返す中国消費。以前のように、スター(芸能人)や有名人を起用したイメージ戦略だけでは、特に若者にはブランドや製品をアピールすることが難しくなっています。
その一方で、中国で「種草」(ジョンツァオ)と呼ばれるシーディング(種まき)の重要性がますます高まっています。ちなみに種草(シーディング)とはマーケティング用語で、宣伝や広告ではなく、SNSやショート動画で情報を発信し、そこからの拡散や“バズリ”を狙ったマーケティング活動といえます。
なかでも種草の最も代表的な舞台となっているのが、 “中国版インスタグラム”と称される、画像や動画の投稿・共有SNSの小紅書(RED)。リアルなクチコミ情報が注目を集めるなか、KOL(キーオピニオンリーダー)やKOC(キーオピニオンコンシュマー)が発信する文章や動画コンテンツが、人々の消費行動に大きな影響を与えるようになっています。
中国ビッグデータ分析会社のAdMasterによると、企業の多くがSNSやショート動画を利用したソーシャルマーケティングへの投資を増加。なかでもKOLやKOCを活用したマーケティングがその重点的な位置を占めているようです。
膨大な予算が必要な芸能人を起用するよりもコストがおさえられ、なおかつ各種専門領域に特化したKOLの活用は、よりコアな消費者層にアピールできる可能性を秘めています。フォロワー数は芸能人に及ばずとも、特定な領域での影響力を生かしながら、ブランドや製品の信頼度をより高める効果も期待できるでしょう。
またKOLよりも、エンドユーザーにより近いKOCに低予算で委託することで、広告予算全体を有効活用でき、より広範囲な種草も可能となります。結果、さらなる種草効果が発揮され、より多くのコンバージョン(販売転換)が可能となるでしょう。
種草を活用したマーケティングは、すでに驚愕な実績を生み出しているケースも多々あります。種草をマーケティングプランニングの重要な項目の1つと据えている企業も多く、そうしたなかでも、KOLが種草マーケティングの核心を占めるようになっています。
そこで課題として浮かび上がるのが、実際に中国で事業を展開する企業にとって、KOLをいかに活用すべきか?KOLの実態は?自社にふさわしいKOLはどのようにして選べば良いのか?各SNSプラットフォーム上でKOLにどのような違いがあるのか?KOLを活用して最大の投資効果をあげるにはどうすれば良いのか?などでしょう。
今号ではこれらの疑問を整理しながら、詳細に調査・分析しました。
あの頃の中国ビジネス&生活(その7)では、中国ネットスーパーの変遷に触れています。2004年から上海に在住し、タオバオや天猫、京東などのネット通販もそれなりに利用していましたが、いわゆる“ネットスーパー”といえるものとの出会いは「一号店」というECサイトでした。
2008年設立の一号店は、日用品に特化したECサイトとして出発。当時、“なんでも屋”のアリババや、家電メインの京東と異なり、ミネラルウォーターや洗剤など、スーパーから持ち帰るには重い商品をメインに取り扱っていました。
ただ、一号店ではまだ生鮮食品の取り扱いはありませんでした。また当時はまだスマホ決済もフードデリバリーも普及していなかったため、普段の食材等の買い物は近所のスーパーで、そしてミネラルウォーターや洗剤などは一号店でという棲み分けとなっていましたが…。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2023年3月号(vol. 102) もくじ
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【巻頭特集】中国Z世代調査分析レポート
自分を悦ばせるための消費を追求
中国消費の主役に躍り出る「Z世代」
【マーケティング戦略】中国KOLマーケティング調査分析レポート
KOCの存在感増す中国「種草」運営
いかにKOLを活用すべきか?
【マーケティングコラム】あの頃の中国ビジネス&生活⑦
中国ネットスーパーの元祖は「一号店」?
フードデリバリー活用でスーパー業は宅配“当たり前”に!