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中国医療環境の現状から考える「健康関連産業」の発展潜在力とチャンス (1)
高まる健康意識が中国人のライフスタイルと消費習慣を変える
2017年2月28日
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生活用品についても消費者は自然由来の原料を使った製品を選択する傾向に
 ここ数年、中国では国民の健康意識が高まり続けているが、ライフスタイルや消費の変化からもそれをうかがい知ることができる。日常生活においては、消費者が食品の選択により慎重になり、健康的な食品を提供するレストランが増加している。非濃縮還元果汁(NFC)、デトックスジュース、ヨーグルトなどの健康飲料の人気も高まっている。
 
 データを見てもこの傾向は明らかだ。2015年には包装済食品の売上が引き続き減少傾向を示し、菓子、キャンディー類、アイスクリームの売上も共に11%以上減少。一方、ヨーグルトや機能性飲料の売上はそれぞれ20.6%と6%増加した。健康志向の高まりを受け、インスタントラーメンと飲料のリーディングカンパニーである台湾系の康師傅(カンシーフ)の16年上半期の純利益は、前年比で64.75%も減少した。コカ・コーラの中国での売上も大きく減少しており、なかでも低濃度果汁飲料の売上は二桁の減少を記録している。

 飲食面だけではない。生活用品についても、消費者の天然、健康志向が高まっている。中国市場において久しく絶対的優位を保ってきたP&Gとユニリーバの売上も減少を続け、化学原料を使用した製品よりも、自然由来の原料を使ったハンドメイドの石鹸類やノンシリコンシャンプーなど、より健康的な製品に人気が集まっている。

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スマートテクノロジーを使って運動量や健康を管理する消費者が増加中
 健康管理への意識も高まり、スマートテクノロジーを利用した健康や体重の管理が注目を浴びている。市場調査大手の英系ミンテル(Mintel)社の「2016年中国消費者動向」によると、現在、スマホやタブレットを使って運動量の管理をしている消費者の割合は30%、今後ウェアラブル機器を使用した健康管理に興味を持っている人は74%にも達している。 一方、亜健康(※)状態にある人の割合は2012年に75%だったのが15年には86%にまで増加、定期的なエクササイズが健康的な生活に重要と考える人の割合も64%に達している。


 ※「亜健康」(Sub-health)とは?
  健康と病気との中間状態を亜健康(半健康状態)という。亜健康の「亜」とは、亜熱帯の「亜」と同じ意味で使われており、深刻な生活習慣病の“予備軍”として中国でも注目されつつある。
  器官、組織、機能上の疾患及び欠陥はないが、不快感、疲労感、脱力感、低反応、活力低下、適応力低下等を自覚し、常に焦りやイライラ、憂鬱、無力感を感じて、生活するのが辛い状態をいう。半健康の発生原因には、アンバランスな飲食、運動不足、睡眠不足、不規則な生活習慣、緊張、ストレス、長期的な体調不良などがあり、またアンバランスな飲食とはエネルギー摂取量過多、人工添加物摂取量過多、必要な栄養素の不足などを指す。
  社会の発展に伴い、仕事によるストレスが増加、生活や飲食習慣も変化し、多くの若者や中年層が半健康状態に陥っている。WHOのデータによると、中国の半健康状態の人口は70%に達しているという。
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中国政府も健康・医療を推進する政策を打ち出した


  健康は単なるブームだけではなく、政府の方針でもある。 「十三五(第13次5カ年計画:2016~20年)」計画の綱要中において、政府は「推進健康中国建設(健康な中国の建設推進)」という章を設け、医薬・衛生システム改革のさらなる全面的推進、国民医療保障システムの健全化、重大疾病の予防・治療及び基本的公共衛生サービスの強化、母子衛生保健及び出産関連サービスの強化、医療サービスシステムの改善、中医薬の伝承及び発展促進、国民健康運動の普及推進、食品・薬品の安全性確保の8方面における具体的な目標を提示している。

 さらに2016年10月には国務院が「健康中国2030計画綱要」を公布、健康的な生活の普及、健康関連サービスの改善、健康保障面の向上、健康的な環境づくり、健康関連産業の発展などについて具体的な発展目標とその戦略を示した(詳細は表1「健康中国2030主要建設指標」を参照)。

  以下では中国の医療環境の現状と、人々の健康意識に着目し、現在の健康関連の消費トレンドを紹介するとともに、中国健康関連産業の今後の発展の潜在力と方向性について考察してみることにする。

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