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【第109回】 人材不足の背景にある内陸部の経済発展
春節後にワーカーは戻ってくる?
2014年2月19日
 春節(旧正月)を終え、実家に帰っていた人の沿岸部への帰省ラッシュがひと段落してきましたが、広東省ではワーカー不足が深刻になっているというニュースが絶えません。実はこれ、春節後の風物詩となっているほどのおなじみの状況です。毎年、旧暦1月15日の元宵節(今年は2月14日)を過ぎると徐々に沿岸部の工場にも人が集まりだし、人手不足解消となるのですが、近年は必ずしもこれが当てはまらないようです。

 2007年から09年にかけて、弊社も華東や華南地区でワーカーの紹介派遣業に携わっていましたが、当時からこの春節直後の人手不足は深刻で、クライアント企業と共に右往左往していたのを思い出します。

 人材を確保するため、各地の職業訓練学校へお願いに回り、卒業見込みの学生を講堂に集めて説明会を行ったりするのですが、就職課の教員との食事会で白酒(アルコール度数50度前後)攻めに遭い、しどろもどろの中国語で挨拶した記憶があります。上海に比較的近い安徽省、河南省、山東省、江西省だけでなく、貴州省や内モンゴル自治区にまで学生を求めて足を運びました。

 こんなこともありました。広東省の日系部品工場の閉鎖にあたり、ワーカー数百名を某大手家電メーカーの工場へ移籍させる話が浮上。我々はワーカーに工場閉鎖を伝えると同時に、移籍先企業の説明会と面接を行うことになりました。

 当日、その家電メーカーから人事部のスタッフ数十名が総出で対応したのですが、会場に現れた人はごくわずか。後で聞いたところ、ワーカーの多くは工場閉鎖により得た経済補償金(退職金)を手に、しばらく新たに職を探さずに休暇に入ってしまったとのこと。中国人材派遣業の難しさを改めて実感した出来事でした。

 こうした人材不足は、内陸都市の経済発展に伴い、わざわざ沿岸部へ出稼ぎに行かなくても十分稼げる環境が整いつつあることが影響しているのでしょう。また、人件費が上がる一方の沿岸部を嫌い、内陸部へ工場を移転する企業も増えています。

 2012年に15〜59歳の「生産年齢人口」が初めて前年を下回った中国。安価な余剰労働力の供給を背景にした経済成長を維持できなくなる「ルイスの転換点」を迎えたとも言われています。中国政府も夫婦の一方が一人っ子であれば2人目の出産を認める一人っ子政策の緩和に動き出しましたが、こうした変化が今後10年、20年後にどう影響するのか。製造業だけでなく、サービスや小売業の観点からも注視しながら、今から準備しておく必要があると思います。

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