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【第284回】 華南消費の原動力と今後の発展余地とは
斬新でチャレンジングな広東省
2017年8月23日
 会報誌17年7&8月合併号の巻頭特集は、広東省6都市(広州、佛山、中山、珠海、汕頭、潮州)の商圏や消費現場の視察レポートです。

 80年代から本格化した改革開放政策による投資・輸出型の経済成長を主導した広東省。経済成長のエンジンが、北京や上海をはじめ沿岸部の各都市から内陸部へとシフトしていくなか、広東省の存在価値が相対的に希薄化した印象もあります。また、見栄やメンツを重んじる北方の消費者と異なり、常に値段と価値の合理性を追求する消費性向を持つ広東人。高級車やブランド品を盲目的に追いかけることがなく、一見おとなしめの消費現場のイメージが強いようにも思えます。

 一方で、早くから経済成長した優位性もあり、他の都市や地域と比べ、明らかに個々の消費者のニーズが多様化。自分のこだわりのモノやサービスについては、とことん追求する傾向にあるのも事実です。また、アクセスが容易な香港やマカオに世界中から集まる最先端の商品やトレンド、消費環境を体験・享受する機会も多いでしょう。

 そうしたバッググランドを土台とし、さらに中国固有の趣向やニーズが融合し、全く新しいコンセプトやデザインの商業施設やショップ、商品・サービスが続々と誕生。それらは“大量生産・大量消費”時代の画一化されたものではなく、多様化したニーズを見据えた個性溢れるものばかりで、広東省の各都市の至るところで斬新的なアイデア、チャレンジングな発想や企画の現場を目撃しました。

 低成長を余儀なくされる日本や台湾が直面するように、売れない時代に“いかに売るか”が問われるようになった中国。政府も経済成長を投資から消費主導型へと推し進めていますが、政府主導ではなく消費者のニーズに基づくビジネス環境こそが、消費主導型経済のあるべき姿なのではないでしょうか。この意味において、次なる中国の経済成長もまた“広東発”になるかもしれないと、今回の視察を通してそう思えてなりません。
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