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【第389回】 低迷続く中国スーパー業界
永輝スーパーが20%増の成長続ける秘訣は?
2019年10月9日
 会報誌9月号では、スーパー業界の分析も行いました。1995年に北京で第一号店となる創益佳店をオープンした仏系カルフール。業界内では、中国に初めて総合スーパーの概念を導入した企業として認識され、中国で展開するスーパーチェーン各社は同社の運営方法やシステム・体制を真似て取り入れたとされています。

 2012年9月に発刊した会報誌第1号の巻頭特集に取り上げたカルフール。当時、中国での販売といえば「カルフールをいかに攻略すべきか」でした。また地方都市では、カルフールが進出すると「わが町にもようやくカルフールが出店するほど経済成長した」と地元民に喜ばれるなど、経済発展の“シンボル”にもなったほどです。

 それが…。ご存知の通り、今年6月に、カルフールの中国事業を家電量販大手の蘇寧(スニン)が買収を発表。カルフールだけでなく、他の外資系スーパーもことごとく業績が低迷し、中国資本に買収されています。

 13年には英系テスコが華潤に、17年には韓国系のロッテマートが物美と利群に、独系メトロも永輝か物美による買収が囁かれています。外資系トップの台湾系大潤発(RTマート)も、仏系オーシャンとともにアリババ傘下となっています。

 外資系だけでなく、国内トップの華潤万家や聯華超市も18年の営業収入の成長率は前年比マイナス。そうした中、唯一永輝超市のみが前年比20%増と成長しているのは注目に値します。福建省・福州発の永輝が低迷するスーパー業界の中でいかに成長を維持できているのか…。

 その鍵となるのが、17年末に永輝に資本参加した騰訊(テンセント)の存在が欠かせないでしょう。微信(ウィーチャット)のオフィシャルアカウントや微信内で動くミニプログラム(小程序)のほか、スマホ決済、SNS広告、企業アカウント、クラウド・コンピューティングなど、テンセントのリテール関連の最新テクノロジーを導入し、店舗のデジタル化を推進。

 市場の変化にも敏感で、15年には生鮮食品をメインに扱うコンビニ型スーパー「永輝生活」の展開をスタート。17年には「新小売(ニューリテール)」業態で“グローサラント”をウリにした「超級物種」を打ち出し、スマホから注文を受け配達する「永輝到家」の運営を開始しています。

 しかしこのように永輝など総合スーパーの動向だけからでは、中国スーパー業の「いま」は把握しきれません。18年に前年比300%増と急成長したアリババ系「盒馬鮮生」。そして今やその盒馬を脅かす存在として注目の「叮咚」。次号ではこうした新しい動きについても触れたいと思います。
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