■ライブコマース
超人気配信主の「薇婭(Viya)」 |
中国のEC(電子商取引)市場は、長年の急成長期を経て、現在は安定市場へと移行しつつある。そうした中、大きな盛り上がりを見せているのが「ライブコマース」だ。テレビショッピングのような実況中継(直播)によるライブコマースは、EC市場に再び勢いをもたらすのか。
ライブコマースを初めて導入したのは淘宝(タオバオ)だ。現在は大手ECサイト各社のみならず、日本ではTikTok(ティックトック)として人気のショート動画アプリ「抖音(ドウイン)」や「快手」などでも、ライブコマースによる商品販売が盛んだ。
淘宝直播(ライブコマース)は、運営開始から3年ほど経った2018年に爆発的に支持されようになった。生み出された消費は1,000億元を超え、前年比400%近く成長。同時に専業のライブ配信者も急増した。現在、月間の売上が100万元超のライブ配信者の数は400名を超えている。
今年の天猫双11(独身の日)セール期間中、半数以上のブランドがライブコマースを利用して、大きな成果を上げた。ライブコマースがもたらした売上は1日で200億元近くに達し、わずか63分で昨年の記録を塗り替えた。
なかでもコスメ業界は、ライブ中継が生み出した消費が業界全体の売上の16%を占めた。内装・インテリアやコンシューマエレクトロニクス業界でもライブコマースによる売上が前年比400%近く成長した。
同セール期间中に売上が1億元を超えた配信主(直播間)は10人、1000万元を超えた配信主も100人以上生まれた。当日最も高い売上を上げた2名の配信主である「薇娅(Viya)」と「李佳琦」のライブ中継は、それぞれ3,000万人と4,000万人以上が視聴。薇娅は双11セール期間中に1人で27億元を売り上げた。
多くのブランド各社もライブコマースへの参入に着手している。P&G、ロレアル、美容機器のヤーマン、靴の百麗(BeLLE)、カジュアルアパレルの森馬(Senma)などを含む国内外100超のブランドが、ライブコマースを展開。企業トップ自らが配信するケースもある。
ライブコマースが登場する前は、商品を画像の形式で掲載する必要があるため、その制作や編集にかなりの時間を要した。静止画像では消費者の直感に訴える力に乏しく、買う気をそそるのは容易くなかった。
ライブコマースは、配信主が実際に商品を見せながら動画で説明するため、その特徴や機能がより伝わりやすい。結果的に消費者が購入を決心するまでの時間が短縮化された。
高い人気と販売実績を有する配信主には、多くのブランド企業がアプローチし、好条件での販売依頼が殺到した。その結果、人気配信主は割引率の高い価格で商品販売ができるようになり、より多くの視聴者がそうした配信商品を購入。配信主のブランドに対するバーゲニングパワーはますます強化され、さらに好条件での商品販売が可能という好循環も生まれている。
ライブコマースの人気高騰により、新たな領域にもビジネスが拡大している。配信主のマネージメントする芸能プロダクションのようなマルチチャンネルネットワーク(MCN)も数多く誕生。こうしたMCNは、2018年時点ですでに5,000社以上に達している。
2019年はライブコマース元年と称される。最近では超人気女優の范冰冰(ファン・ビンビン)もライブコマースに参入するなど芸能人にも波及。来年もこのブームはより加速していきそうだ。