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「網紅」のイベントに多くの若者が集結(写真:杭州大悦城モール) |
会報誌2020年6月号では、新しいビジネスモデル「S2b2c」を研究しました。スマートフォン(スマホ)の普及で、個人メディアの構築が容易となる中、中国では特にその影響力を販売(Eコマース)に結びつけようとする動きが顕著になっています。
その最大の功労者は、チャットSNSアプリの微信(ウィーチャット)でしょう。いまや中国のすべてのスマホユーザーが使っているといっても過言ではない微信。単にチャットや近況を伝えるSNSの機能だけでなく、スマホ決済からクーポン、地下鉄などの公共交通機関、病院などあらゆる生活シーンで利用されているスグレモノです。
この微信、日本でいうLINEと同じで、連絡先に登録されているのは基本お互いに「許可」した友人・知人のみ。気心知れた、または少なくとも面識のある人たちばかりなので、ウェブサイトやブログなどその他大勢にオープンになっている情報発信よりも、親近感が湧きやすく、宣伝効果も高まります。
仮に私の友人から微信上である栄養ドリンクを紹介され、身体にいいから飲んだら?と薦められたとしましょう。これが企業やお店からの広告であればそれほど気にせずスルーするところ、平素からよく食事をする友人からとなると、一瞬「そうなの?」と興味を引くはずです。
実際に試してみたいと思い、購入する場合も、友人に微信支付(ウィーチャットペイ)で送金し、すぐに郵送してもらうことも可能です。これはあくまでも友人同士のやり取りですが、この推薦者が芸能人や専門家だけでなく、いわゆるKOL(キーオピニオンリーダー)やインフルエンサーと呼ばれるネットで人気の「網紅(ワンホン)」であってもおかしくないでしょう。
S(Supplier)である企業やプラットフォームが、こうした個人メディアを有する網紅であるb(business)の影響力や販売力をフル活用し、かつ一緒にタッグを組んで彼(彼女)らのフォロワーであるc(customer)に販売しようというのが「S2b2c」モデル。bとcをあえて小文字にしているのがまた斬新ですね。
最近多くの日本企業もこの「S2b2c」モデルの一種であるソーシャルECやライブコマース、「社群」、「私域」といった売り方に関心を高めています。日本とは異なる、いまの中国ならではのビジネスモデルを知らずして、中国ビジネス戦略は語れないという思いで調査・研究しました。