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【業界研究】中国越境EC業界 (7)
地方都市で急成長 中国越境ECの今後の動向
2020年8月7日
地方都市で急成長
中国越境ECの今後の動向

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天猫国際のオフライン店舗
中国越境EC業界の今後のトレンドとして次の3つが挙げられる。つまり、地方都市への拡大、オフラインでの展開、そして商品の多元化だ。

1)地方都市への拡大
  現在、越境ECユーザーの多くは一線・二線級都市に集中している。しかし、三線・四線級都市、更には農村地区でも消費レベルや嗜好がアップグレードし、物流・倉庫面が大きく改善するのに伴い、輸入品の消費が増えている。

  艾媒諮詢(iiMedia Research)が公表した「2019上半期中国越境EC市場研究報告」によると、「618(6月18日のネットセール)」の期間中、三線・四線級都市の越境EC取引は前年比153%で激増したという。

  天猫国際(Tモールグローバル)が毎月25日に行う「輸入品デー(進口日)」キャンペーン当日には、三線・四線級都市の注文件数が開場からわずか1時間で前年比1,170%増を記録。輸入商品を購入した人の数は前年比10倍以上となり、その伸びは北京、上海、広州などの一線級都市を大きく上回ったもようだ。

2)オフライン体験型店舗の展開
  オンラインの顧客獲得コストが上昇を続けるのに伴い、越境EC各社もオフラインでの展開を強化しはじめている。

  2018年、ネットイースコアラ(網易考拉)が初のオフライン店舗「海淘爆品店」を浙江省・杭州にオープン。その後、寧波(浙江省)、鄭州(河南省)などにも出店。2019年内に15店を展開する計画だ。

  天猫国際もオフライン店舗1号店を杭州にオープン。小紅書はオフラインでもコミュニティを運営し、上海に初の体験型店舗をオープンした。豊趣海淘の実店舗「Wow哇噢」は重慶に出店している。

3)更に多様化する輸入先国と商品
  中国政府の「一带一路」政策の推進に伴い、中国と一带一路沿線国との貿易が拡大。越境ECもより多様化した商品を扱うようになっている。

  天猫が公表したデータによると、天猫国際が扱う輸入商品は2019年3月時点で77の国及び地域から、4,000品目超、約2万種の商品に及んでいるという。
2019年の「618(6月18日)」セールでは、天猫国際で販売される海外ブランドの取引量が前年比197%増加し、618セールに初めて参加した870の海外ブランドの1日の売上が平時の100倍を記録したもよう。

  ヨーロッパ、東南アジア、南米などの商品が人気を集め、オーストリア、ロシア、ベトナムの商品はそれぞれ1万324%、8,958%、1,047%増と急成長。アルゼンチン、ギリシャ、フィリピン、フィンランド、キューバ、カンボジア、トルコなどの商品も高い売上を記録した。

中国政府も積極支援
法整備で規範化進む

  中国政府による政策支援も、越境EC市場の発展を大きく後押ししている。

  2019年元旦に、越境ECの新しい政策「中華人民共和国電子商務法」が施行された。越境ECで輸入の際に、初回のライセンス申請や登記が不要となった。商品の輸入も個人用途で持ち込む(仕入れる)場合と同レベルの監督管理が適用されている。政策の適用範囲も15都市から37都市に拡大され、越境EC業務の全国展開が可能になった。

  また、越境EC輸入リスト内の商品は、限度額内であれば関税が免除されるようになった。これまで輸入段階で増値税や消費税(ぜいたく税)など合わせて70%もの税金を支払う必要があったが、優遇を受けられる商品の範囲が拡大。消費者からのニーズが高い63品目において、より手軽に外国商品が購入できるようになった。

  個人の消費限度額も上限が引上げられた。新しい規定では、税制の優遇が受けられる商品の上限額も引き上げられ、1回の消費の上限額が2,000元から5,000元に引き上げられた。年間の上限額もこれまでの2万元から2.6万元に引き上げられ、今後も収入の増加に伴って随時調整されていく予定だ。

  「中華人民共和国電子商務法」で、中国政府が今後もECの発展を促進し、越境ECに適した健全な税関、税収、出入国検査検疫、決済などに関する管理制度を確立すると明言している。各フローでの利便性を高め、越境ECプラットフォームの運営者などによる倉庫物流、通関、検査などのサービスに便宜を図る方針だ。市場の規範化を推進する一方で、個人による代理購入は規制を強化していく。

  2019年7月、中国政府の国務院常務会議は、現行の35箇所の越境EC総合試験区のほか、更に試験区を増設する計画を表明した。試験区の増加は、これまでの越境EC園区の経験を生かし、越境ECを更に全国に広めることを目的としている。

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