会報誌2023年11月号(vol. 109)の巻頭特集では、中国で「即時零售」と呼ばれるインスタント・リテールを取り上げました。
日本ではQ(クイック)コマースやオンデマンド・リテールとも呼ばれるインスタント・リテール。スマートフォン(スマホ)から注文した商品やサービスを、フードデリバリーなどライトワンマイルのデリバリー網を利用して届ける小売流通のビジネスモデルのことです。
具体的には、ユーザーがネット上で商品を購入すると、所在地3~5キロメートル内にあるリアル店舗から自社物流または外部の第三者物流を利用して配達される仕組み。商品にもよりますが、日用品なら通常30~60分程度でユーザーの手元に届き、スピーディに「いますぐに欲しい」ニーズに応えられるのが人気の秘訣となっています。
インスタント・リテールの強みは、従来型のビジネスモデルに比べて、商品の配達までにかかる時間が圧倒的に短く、かつ効率がいい点。リアル店舗にわざわざ足を運ばずとも、スマホで欲しい商品を探し、いつでも気軽に注文できる。リアル店舗側にとっても、オンラインとの連携により、より幅広い顧客を獲得できるメリットがあります。
中国新世代の消費者たちは気分重視で、欲しい時にすぐ手に入れ、その場で使いたいと考える傾向が強いようです。
米コンサルティング大手のアクセンチュアが公表した「フォーカス―中国の『95後』消費者グループ」によると、1995年から1999年生まれの「95後」世代の50%が、買ったものをなるべく当日に受け取りたいと考え、そのためなら多少の費用を余計に払っても構わないと回答していいます。
中国調査会社iResearch(艾瑞諮詢)は、2022年の中国国内インスタント・リテール市場規模は5,043億元で、2026年には2兆5,000億元に達すると見込んでいます。
市場規模が拡大し、物流・サプライチェーン網が整備されるにつれ、インスタント・リテールで扱われる商品ジャンルも、従来型の生鮮食品や日用品、医薬品などから、デジタル製品から家電、家具、ファッション、コスメなどに拡大しています。
今号では、中国で急成長を続けるインスタント・リテール業界にスポットライトを当て、その本質や発展経緯、主要ビジネスモデルとその特徴、トレンド、各企業の状況などを紹介しています。
次にトレンドウォッチとして、中国人の「家居」(おうち)消費に迫りました。
長引いた新型コロナウイルスの流行で、停滞していた中国の「家居」業界。家居とは住まい・住環境のことですが、家具・インテリアから家電、日用品、雑貨など家庭内での消費全般を総称しています。
2023年に入り、当初は回復の兆しを見せた不動産市場ですが、5月以降、不透明感が増しています。コロナ期に自宅で過ごす時間が増えた中国の人たちは、住環境に対する思い入れをより強くしており、若者の間でも、自宅での時間を重視し、快適な居住空間を築こうとする人が増えています。
小紅書(RED)や抖音(ドウイン・TikTok)など、若者に人気のソーシャルメディアでは、多くの若者が自宅での過ごし方や娯楽、仕事、学び、社交、創作、家事などの情報を投稿・シェアしています。
小紅書が公表した「2023年『家生活』トレンド白書」によると、ここ3年間で、小紅書の「家居」関連コンテンツの投稿数は6倍に増加。関連製品の検索回数も3.5倍増となっています。
抖音でも関連のショート動画の人気が急上昇。運営元であるバイトダンス(字節跳動)傘下のコンテンツ分析プラットフォーム「巨量算数」と第一財経商業データセンターが共同で公表した「2023 抖音家居生態報告」によると、2022年の1月から9月には、関連動画の再生回数が前年同期比で42%増加したと伝えています。
中国人の情報収集・消費チャネルも変化しつつあります。家居関連製品の情報収集や購入チャネルは、ほぼ完全にオンラインに移行。「家居」専門のクリエイター(コンテンツ制作者)たちが、ソーシャルメディア上で存在感を高め、オピニオンリーダーとして大きな影響力を持つようになっています。
中国政府も政策を通して、家居関連消費の拡大とアップグレードを奨励。2023年2月には、国務院が「質量(※品質)強国建設綱要」を公布し、その重点品目に家居と家電も含まれています。
2023 年7月には、商務部などの13部門が共同で「家居消費促進の若干措置に関する通知」を公布。ハイクオリティな製品の供給力を高め、新たな消費シーンを積極的に開拓。消費環境を有効に改善し、その最適化を図ることで、市場の発展を目指すというもの。
このように官民挙げて振興を図る家居業界。自宅での生活の各シーンにスポットライトを当て、中国の「おうち」内での消費状況やトレンドについて調査・分析しました。
あの頃の中国ビジネス&生活(その14)は、スマホ決済普及で「新小売」の新業態が続々登場するなか、中国各地で“雨後の筍”のごとく登場した無人コンビニについてです。
2016年ごろに勃発したタクシー配車アプリ「滴滴」と「快的」の2社によるキャッシュバック合戦をきっかけに一気に広まったスマートフォン(スマホ)決済。フードデリバリーやシェア自転車などへと経済圏は広がり、一般の店舗でも使えるようになるには多くの時間を要しませんでした。
リアルの場面でのスマホ決済が“当たり前”となるなか、アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が2016年に提唱した「新零售(新小売)」。オンラインとオフラインを融合したオムニチャネル概念をベースとした新興ビジネスモデルが続々と登場しました。
その筆頭格の一つが、2017年ごろに上海っ子の間で話題となった「無人コンビニ」です。
約10平米の大きさで、店の前面全てがガラス張りでひと目を引くボックス型コンビニ店「繽果盒子(Bingo Box)」。繽果盒子のほかにも、中国各地の一・二線級の大都市では、F5未来商店、快猫Take Go、神奇屋智能便利店、小E微店、怪獣家、甘来智能微超、EATBOXなど多くの無人コンビニ店が誕生した…。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2023年11月号(vol. 109) もくじ
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【巻頭特集】中国「即時零售」業界分析レポート
ラストワンマイルのフードデリバリー網がECへと様変わり! “今すぐ欲しい”に応えて「即時零售」(インスタント・リテール)急成長
【トレンドウォッチ】中国「家居」消費トレンド洞察レポート
住まい・住環境にこだわる中国人が増加 中国人の「家居」(おうち)消費のいまに迫る
【マーケティングコラム】あの頃の中国ビジネス&生活⑭
スマホ決済普及で「新小売」の新業態が続々登場 中国各地で“雨後の筍”のごとく登場した無人コンビニ