会報誌12月号(vol.70)では、巻頭特集で2019年の中国消費トレンド番付を発表しました。2016年から毎年12月号の好例となった「中国消費トレンド番付」。今年も中国の消費現場やトレンド、流行、話題、ニュース、ライフスタイル、価値観など、特に顕著で注目すべき事柄について番付表にまとめました。
今年は米中貿易摩擦などの影響で景気減速がメディア等で騒がれる中、ここ数年見られたように斬新的なビジネスモデルや新サービスの勃興には乏しかった感が否めません。一方で、着実に消費が質的にも量的にも力強く成長している姿が垣間見れました。
中国人としてのアイデンティティの高まりから、「国潮(国産愛)」ブームが各界に波及。一方で、ごみ分別の施行による環境意識の高まりや、室内スキー教室、スマホベースの簡易ジムなど、健康やスポーツ熱の高まりも、モノからコト、さらにはスローライフを求める消費性向の変化が顕著になっています。
スマホエコノミー(経済)の深化も見逃せません。大都市だけでなく、中国全土隅々にまで普及したモバイル通信網と物流網により、「下沈」と称される地方の中小都市や農村部に住むスマホユーザー層が、ついに消費の表舞台に登場。ネット業界をはじめ、大きな注目を集めました。
従来型産業のネット(スマート)化も目立ちました。家事代行からオーダースーツ、さらにはテレビショッピングならぬライブコマースなど、色んなビジネス形態がスマホの画面内に集約。もちろん、広告宣伝の機能として「網紅(ワンホン)」の影響力もさらにパワーアップした感もありました。
このように一見あまり目立ったトピックが少ない中、特に注目すべきトレンドや事柄について、弊社の独断と偏見で番付しています。今後の中国消費の未来を占う上でも、ぜひ参考にしていただければと思います。
次に、取り上げたのが1年に1度、11月11日に開催されるEC(電子商取引)ビッグセール「双11(独身の日)」についてです。
アリババ系の天猫(Tモール)と淘宝網(タオバオ)の取引額は、今年も最高記録を更新。合計で2,684億元に達し、昨年の2,135億元を26%上回りました。1日の取引額がすでに楽天の1年の取引額を上回るのですから、中国の消費力のすごさを思い知らされます。
双11セールを2008年に始めた天猫と淘宝だけでなく、京東(JDドットコム)、拼多多(ピンドウドウ)、蘇寧(スニン)など他のECサイト各社も高い取引額を記録し、これまでの記録を更新。双11セール期間中のネット全体の取引額は4,101億元に達し、前年比30.5%増の成長でした。
今年の双11セールの成長は、主に中国で「下沈市場」と呼ばれる三線級以下の地方都市と農村地区の市場開拓に依るところが大きかったと多くのメディアで分析されています。中国の地方都市・農村の市場成長が、中国ECの新たな牽引役として登場した「元年」とも言えるでしょう。
ECサイト各社が地方都市や農村地区への進出を積極化しながらも、客単価は穏やかな上昇傾向を保っているのは注目に値します。消費は地方へと広がりつつある中、消費レベルは全体的に落ちていないことは、中国人の消費意欲が依然旺盛だと見て取れます。
今号では、今年の双11セールの各サイトの販売状況について分析しながら、売れ筋の商品やブランド、そこから垣間見れる消費トレンドについて解説しています。
そのほか、以下のとおり、中国消費やマーケティングに関する情報が盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2019年12月号(vol.70) もくじ
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【巻頭特集】2019年中国消費トレンド番付
「国潮(中国愛)」ブームが広く波及
地方と農村市場がいよいよ表舞台に登場
【業界研究】天猫「双11(独身の日)」セール
新記録更新の双11セールを徹底解剖
地方・農村とライブコマースの勃興に着目
【マーケティングレポート】ナマケモノたちの家③
「宅配」という名のスマートホーム