会報誌2021年11月号(vol. 89)の巻頭特集では、中国で最近よく話題となる「新消費」に迫りました。EC(電子商取引)だけでなく、SNSやTikTokなどニューメディアの強みを最大限活かしながら、新商品を開発・販売する“新しい”消費ブランドが続々と誕生。今や、既存のメーカーやブランドを凌駕するほどの勢いがあります。
2020年には、中国GDP全体の54%を占めるに至った消費が、中国経済成長の牽引役を担うようになっています。なかでも、Eコマース(電子商取引)は、中国の消費成長を支える重要な存在です。2020年に、ネットの実物小売総額が中国の社会消費品小売総額(小売全体)に占める割合は24.9%に達し、内需拡大とともに、中国で「消費昇級」と称される消費アップグレードトレンドにも大きく貢献。このEコマースの急成長が、中国を「新消費」の時代へと導いた最大の原動力といえるでしょう。
「新消費」というキーワードは、2015年11月23日に中国政府の国務院が公布した「『新小売』の主導的効果を積極発揮し、新たな攻撃力・動力育成を加速することに関する指導意見」の中で初めて登場しました。この文書では、「従来型消費システムのアップグレードと、新しい消費の振興を主要内容とする『新消費』」という表現で用いられています。
実際のところ、新消費とは、「デジタル技術などの新技術のほか、オンラインとオフラインの融合をはじめとする新たなビジネスモデル、そしてSNS(ソーシャルネットワーク)やニューメディアの活用から生まれた新たな消費行為」と定義できるでしょう。
5G、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、人工知能(AI)などの新技術の急発展や普及に伴い、従来型の小売業の変革が加速。供給サイドではオンラインとオフラインの一体化やプラットフォーム化が進み、地域コミュニティ(社区)化、サービスの製品化、マーケティングの社群(ネットコミュニティ)化などがトレンドとなっています。
消費者サイドからも見ると、1990年〜94年生まれの「90後」、95年〜99年生まれの「95後」、2000年以降生まれの「00後」世代といった若い消費者層が台頭。中国で「圏層」と称される“お仲間”消費やパーソナライズが浸透し、品質重視など新たな消費ニーズが新消費発展の大きな牽引力となっています。
そこで、今号では新消費時代の消費トレンドや変化、ニーズをどのように読み取り、そして企業はこの新消費とどのように向き合うべきかについて調査・分析しました。新消費を特徴づける7つのキーワードから、デジタル化が変革をもたらした新しいバリューチェーン、「後浪」(新) vs 「前浪」(旧)ブランド間のバトル、新消費の成功ジャンルと「90後」世代との相関関係などについて、成功事例のケーススタディとともにレポートしています。
次に業界研究として、中国で急成長するプレミアムコーヒーと新興カフェブランドを取り上げました。
中国主要経済メディアの第一財経傘下の新一線都市研究所が、2021年に公表した「上海コーヒー消費指数」によると、現在、上海市内のカフェ(コーヒーショップ)数は6,913店で、世界で最もカフェの多い都市に浮上。人口1万人当たりのカフェ店舗数も上海が2.85店で、ロンドンやニューヨーク、東京などとほぼ肩を並べているようです。
上海にあるカフェのうち、42.99%はチェーン店で、そのうち35%は、スターバックスや英系のコスタコーヒー(Costa Coffee)といった大手チェーン。また半数以上が中国で高級・高品質なコーヒーを意味する「精品珈琲」、つまり、日本ではプレミアムコーヒーやスペシャリティコーヒーと呼ばれ、生豆を選別し、新鮮なローストで正しく抽出されたコーヒーを扱っています。
上海のカフェブームの背景には、中国のコーヒー消費量の急増があります。コーヒーブームは一線・二線など各地の主要都市を席巻し、すでに地方都市へも拡がりを見せているようです。ロンドンにある国際コーヒー機構(ICO)のデータによると、中国のコーヒー消費は現在、毎年15~20%増のスピードで急成長中とのこと。世界平均の2%と比較すれば、そのすごさがわかるでしょう。
中国税関総署のデータによると、2021年上半期に中国に輸入されたコーヒー豆の総量は、6,177万キログラムで、前年同期比で104.3%増。輸入総額は2.38億米ドルで、同じく前年同期比76%増でした。中国の企業情報サイト「企査査」のデータでも、中国のコーヒー関連企業は現在15万社を超えているもよう。2021年の1月から9月だけでも、1.8万社が新たに会社登記したようです。
ベンチャーキャピタルのコーヒー市場への注目度も高まっています。2020年から2021年7月にかけて、中国ではコーヒー関連で50件近く資金調達され、2021年の1月から7月だけを見ても、同業界での調達総額は63億元に達しています。
売り上げの水増しを理由に米ナスダックから上場廃止に追い込まれたラッキンコーヒー(瑞幸咖啡)が2.5億米ドルの融資を獲得したほか、新興のプレミアムコーヒーチェーンのマナーコーヒー(Manner Coffee)やエムスタンド(M Stand)、シーソーコーヒー(Seesaw Coffee)のほか、カナダ系のティム・ホートンズ(Tim Hortons)なども多額の融資を獲得。
またサターンバード(三頓半)、永璞珈琲、時萃(SECRE)などのインスタントコーヒーブランドも融資のターゲットに。アリババ傘下の生鮮スーパーの盒馬(フーマー)も、雲南省昆明に「盒馬咖啡」をオープンさせました。
そこで今号では、中国におけるコーヒー市場にスポットライトを当て、その現状や消費昇級(アップグレード)トレンド下における消費者ニーズの変化を分析。さらに、マナーコーヒーに代表される新興のプレミアムコーヒーブランドをいくつか紹介しています。
そのほか、以下のとおり、中国消費やマーケティングに関する情報が盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2021年11月号(vol. 89) もくじ
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【巻頭特集】中国「新消費」調査分析レポート
「90後」世代とデジタル化が“新しい”消費を牽引
中国「新消費」時代といかに向き合うべきか!!
【業界分析】中国カフェ市場調査分析レポート
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