会報誌2022年5月号(vol. 94)の巻頭特集では、若いZ世代をターゲットに個性的な商品やブランド、さらには内装デザインで話題のセレクトショップを取り上げました。中国では近年、バイヤーショップという意味の「買手店」や、ブランド集合店という意味の「品牌集合店」と呼ばれるリアル業態のセレクトショップが人気となっています。
中国で「潮流」と称されるサブカルチャーやストリート系ファッションを扱うお店から、限定版スニーカーやスポーツシューズ、中国で「潮玩(潮流玩具)」と呼ばれるミニフィギュアなどのデザイナーズトイ、そしてコスメのサンプル品などを集めた店舗などが、新たな人気スポットとして若者を中心に人気が高まっています。
中国版インスタグラムと称されるSNS(交流サイト)の小紅書(RED)上でも、コスメの「HARMAY話梅」や、ストリート系ファッションブランドが中心の「KNOWIN潮流実験室」、世界中のデザイナーズブランドを集めた「LOOKNOW」など新興のセレクトショップが、写真映えを求める愛好家の間で、“マストゴー”スポットのランキング上位に名を連ねています。
これらセレクトショップの主要ターゲット層は、1990年後半から2000年代前半生まれの若いZ世代です。商品の品質や価格、ブランド価値だけでなく、消費体験にも強いこだわりを持つといわれるZ世代。セレクトショップの多くは、こうしたZ世代の価値観を反映した店づくりを徹底しています。
同時に、個性や雰囲気を重視し、中国で「悦己消費」といわれる自分を悦ばせるための消費や、新しいモノを試す「嘗鮮消費」など、若者の感性に訴えるマーケティングにも注力しています。
各ショップが独自に設定したテーマやコンセプトを、店内の内装や商品陳列に反映させることで、消費者の写真撮影欲を刺激。体験(コト)や中国で「沉浸式」と呼ばれる店内の環境や雰囲気に“没入”してしまうような消費シーンを創出することで、若者の新たな消費を呼び起こすことに成功しています。
そこで今号では、昨今、若者から買い物をする場としてだけでなく、カルチャーやトレンドを身近に感じられ、なおかつ仲間との繋がりや交流を求めて集まる場として人気のセレクトショップに注目しました。
セレクトショップの4大類型から、4つの特徴、モールでも人気を集めている5つの要因、アフターコロナ時代の近場消費ニーズ、そして話題のセレクトショップ「KNOWIN潮流実験室」、「Solestage」、「LOOKNOW」、「hug」、「SND」や、新一線都市の成都、杭州、西安の状況にも迫りました。
次に、中国でマーケティングの基本ツールとして定着したソーシャルメディアを攻略するために必要不可欠のSNSプラットフォームを比較・分析しました。
ソーシャルメディアとは、ウィキペディアでは「誰もが参加できる広範的な情報発信技術を用いて、社会的相互性を通じて広がっていくように設計されたメディア」のことで、「双方向のコミュニケーションができることが特徴である」と説明されています。
その具体的な種類として「電子掲示板、ブログ、ミニブログ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、メッセンジャーアプリ、ビデオ会議アプリ、画像・動画共有サービス、ライブ動画配信サービス、ポッドキャスト、ナレッジコミュニティ、ソーシャルニュース、ソーシャルブックマーク、レビューサイト」などが挙げられています。
つまりソーシャルメディアとは、多数の人々や組織が参加して生まれる双方向コミュニケーションメディアの総称といえるでしょう。淘宝(タオバオ)や天猫(Tモール)で投稿したレビューやコメントもソーシャルメディアに含まれますが、今号ではあえてSNSを中心に議論を展開しています。
KOL(キーオピニオンリーダー)を活用したマーケティングのほか、中国で「種草」(ジョンツァオ)と称されるシーディングコンテンツやライブコマースなど、現在主流となっているマーケティング手法は、ソーシャルメディアの影響力を活用しなければ、その効果を充分に発揮することができません。
中国のソーシャルメディアといえば、当初は網易(ネットイース)や捜狐(ソウフー)などのポータルサイトや百度貼吧などのフォーラム(論壇)型サイトが中心でした。その後、微信(ウィーチャット)や微博(ウェイボー)が台頭し、続いて動画再生やライブ配信プラットフォームが人気を集めるようになりました。
ここ数年は中国版TikTokの抖音(ドウイン・TikTok)や快手(クアイショウ)などショート動画が大流行。コンテンツの形態も文章+画像中心から動画、さらにはソーシャル(SNS)や販売機能も備えた複合型へと進化を続けています。
またコンテンツとEC(電子商取引)の結びつきが密接になるのに伴い、コンテンツECが急成長しています。その一形態でもあるライブコマースも常態化しつつあります。
そこで、今号では、中国で現在最もメジャーな7大SNSプラットフォームである微信(ウィーチャット)、微博(ウェイボー)、抖音(ドウイン・TikTok)、快手(クアイショウ)、bilibili(ビリビリ)、小紅書(RED)、知乎(ジーフー)にスポットライトを当て、それぞれの特徴やビジネスモデル、適したマーケティング手法などを紹介しながら、中国ソーシャルメディアの全体像を探りました。
マーケティングレポートは前号に続いて、上海ロックダウン下の買い物事情についてです。ネットスーパーやフードデリバリーが配達員不足で機能しなくなるなか、日々の買い物の“救世主”として登場したのが、「団購」(トゥアンゴウ)と呼ばれる共同購入です。
なかでも活躍が目覚ましかった「群接龍」(チュンジエロン)と「快団団」(クアイトゥアントゥアン)という2つの共同購入ミニアプリについて、まとめ役の「団長」の種類や役割を交えながら解説しています。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
================
会報誌『中国消費洞察』
2022年5月号(vol. 94) もくじ
================
【巻頭特集】セレクトショップ市場調査分析レポート
コト消費と写真映えを意識した“リアル”で勝負
個性あふれるセレクトショップがZ世代に大人気
【マーケティング戦略】中国7大SNSプラットフォーム比較分析レポート
中国ソーシャルメディアをいかに活用すべきか?
中国7大SNSプラットフォームを徹底比較
【マーケティングレポート】上海ロックダウン下の買い物事情②
共同購入2大ミニアプリ「群接龍」「快団団」とは?
商品調達役の「大団長」から「小団長」に販売を託す!