会報誌2017年5月号(vol.44)では、巻頭特集に2016年の中国スマートフォン(スマホ)アプリのランキングを取り上げました。16年末にインターネット人口が7.31億人に達した中国。そのうち、スマホユーザーが6.95億人で全体の95.1%を占め、ますます「ネット=スマホ」の構図が成り立っています。
スマホによるネット利用が普遍化する中、スマホアプリも中国人の生活に深く浸透しています。また多くの消費トレンドが今やアプリから生み出され、さらには社会現象になったものすらあります。
自らの中国での生活を眺めても、家族や友人、さらには同僚やクライアントとの連絡は今や「微信(ウィーチャット)」でほぼすべて完結。タクシーは配車アプリの「滴滴出行」、旅行や出張のチケット予約、出前、日用品・生鮮品の購入などいずれもアプリで。もちろんこれらすべての支払いはスマホ決済の「微信」か「支付宝」を利用、コンビニやレストランなどリアル店舗でも今や財布を取り出すことはほぼ皆無です。
こうしたスマホ生活圏が形成された中国において、実際にどのようなアプリが使われているのか気になります。そこで、SNS、実況動画、ショート動画、動画視聴、ミュージック、音声リスニング、EC、グループ購入、出前代行、配車、シェア自転車、スポーツ・トレーニング、健康生活関連、ニュース情報、閲読など各領域でどのようなアプリが人気を集めたのか。また中国人の生活にどのような影響をもたらしたのかについて徹底分析しています。
トレンドウォッチでは、上記のアプリランキングには登場していないのですが、最近、巷で圧倒的な存在感と影響力を持つ口コミアプリ「口碑(Koubei)」を取り上げました。
中国の隅々にまで普及したスマホ決済。その普及を推し進めたのがテンセント系「微信」とアリババ系「支付宝」の2巨頭であることは言わずもがなでしょう。最近、支付宝での決済が可能なレストランや小売店のレジで「支付宝・口碑」と書かれた表示を目にします。実際に支付宝のアプリを開くと、トップページ下部に「口碑」のボタンが設置されています。
これはアリババが推し進める口コミアプリ。日本でいう「食べログ」や「ぐるなび」の中国版です。元々、中国の口コミアプリはテンセント系「大衆点評」(15年にグループ購入の「美団」と合併し、新会社「美団点評」を設立)が最大手で、ユーザー間の口コミ評価からレストラン予約、さらには出前代行とサービスを拡大しています。
この分野では大衆点評がほぼ独占の状態だったのですが、アリババが傘下のオンライン金融企業「螞蟻金服」との共同出資で「口碑」を設立。15年6月の正式ローンチからわずか2年で200万店のレストランやショップを取り込むことに成功。1日の取引件数では16年に1500万件に達し、美団点評(1300万件)を抜いてトップに。また来店サービス市場(取引規模)でも、1731億元で、美団点評(1875億元)に猛追しています。
このように急成長する口碑ですが、いかにその勢力を拡大しているのか。どのような戦略と体制で実現できているのか。こうした疑問に答えながら、これらを可能にした仕組み、またそのベースとなるアリババ・グループ全体で集めたビッグデータ、さらに来客や売上増による店舗の利益アップを第一義とする思想などについて調査・分析しています。
こうした取り組みもすべてが、馬雲(ジャック・マー)氏が提唱する「新小売」(ネットとリアルを有機的に融合)時代を見据えての戦略と言えるでしょう。また一方では、微信でスマホ経済圏を席巻するテンセントに対する逆襲とも思えるほどの意気込みが感じられる「口碑」。ぜひとも一読をお薦めします。
中国コンビニ最前線レポートでは、北京のコンビニ事情について。「北京のコンビニの数はなぜ上海のように多くないのか?」と疑問に思います。実際に中国チェーン経営協会の「2016年中国都市別コンビニ発展指数」でも、コンビニ密集度で1店当たりの人口が7185人と上海(3466人)から大きな遅れをとっています。冬の厳しい寒さや広い道路幅で構成された都市構造などが理由としてあげられるでしょう。
しかし16年に入り、北京ではコンビニが開店ラッシュを迎えています。実際に205店が新規オープン、17年も200店が開店予定とのこと。中国政府のお膝元ながらコンビニ後発地だった北京で一体何が起こっているのでしょうか。その背景には地元政府による手厚いサポートとともに、同業界の規範化が関係しているのですが、その詳細はいかに…。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
vol.44(2017年5月号) もくじ
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【巻頭特集】
『スマホユーザー7億人の生活支えるアプリ徹底調査』
2016年人気スマホアプリ~ランキング&トレンド分析
【トレンドウォッチ】
『「新小売」モデル推進の“秘密兵器”~口コミアプリ「口碑(Koubei)」』
アリババグループのビッグデータ活用、加盟店の経営効率を改善
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『北京市が規範を策定しコンビニのサービスを立地に応じて明文化』
開店ラッシュを迎える北京のコンビニ事情
【都市別調査】
水、TV、10元ショップ 〜 その②
『3者3様のこだわり 実現のための努力』