会報誌2024年1&2月合併号(vol. 111)の巻頭特集では、ニーズの多様化とメリハリ消費がますます顕著となる2024年の中国消費トレンドを洞察しました。
アフターコロナ元年となった2023年。中国消費は期待されたほどのリベンジには至りませんでしたが、マクロデータからはいくつかの注目すべき傾向が読み取れます。
中国のGDPは2023年に、概算値で126兆582億元となり、前年比5.2%増と成長。百貨店やスーパーの売上、インターネット販売を合計した社会消費品小売総額(小売全体)は47兆1,495億元で、前年比7.2%増でした。
GDP成長率5.2 %のうち、消費が4.3%で、寄与度は82.5%に達するなど、消費がまさに経済成長の原動力となっています。より良いモノを求める「消費昇級」(消費アップグレード)トレンドが広がるなか、中国消費は商品からサービス主体型へと移行しつつあります。
2023年の中国消費市場では、様々な特徴のある現象が観察されました。例えばコンサートが人気を集め、チケット入手が困難になったこと。ディスカウントチェーン店が大盛況となったことは、その一例といえます。
アフターコロナ時代の消費者心理には、理性消費ととともに、自身を悦ばせる「悦己」(ユエジー)消費のトレンドが共存しています。お金は使うべきところに使いたいが、使うべきところは、個人の感覚や嗜好で判断する。他人の評価は気にしないが、自分の満足には正直でありたいといったところでしょう。
理性消費や消費降級(ダウングレード)など、消費に対する下向き圧力が取り沙汰される一方で、労働節(5月)や国慶節(10月)など大型連休には、多くの旅行客が高い宿泊料のホテルを予約し、SKPなど高級モールでブランド品を購入。お金を貯めたいと思いながらも、高額なコンサートチケットは買わずにいられない…。
2024年も、中国政府は内需を刺激しながら消費を喚起する政策を継続するでしょう。潜在的な需要を刺激し、消費を復調からさらなる拡大へと導くことが、政策の大きなミッションとなっています。
2024年に、中国の消費市場ではどのようなニュートレンドが生まれるか?潜在需要を呼び起こすために何をすべきか?新たな消費シーンをいかに演出し、消費へと結びつけるか?そうしたなか、企業各社はいかに消費トレンドを読み、機会をつかむべきか?などについて考察しています。
次に2023〜24年の中国EC業界を総括しています。
中国のEC(電子商取引)市場は、2023年に取引高が前年比11%増の15兆4,000億元を突破。2013年から連続11年間、世界最大のEC市場の座をキープしています。
中国のEC市場は、淘宝(タオバオ)、天猫(Tモール)、京東(JDドットコム)など従来型のいわゆるECサイトのほかに、コンテンツコマース、ライブコマース、インスタント・リテールなど各種形態が参入した多極的な競争時代となっています。
2023年にGMV(流通取引総額)が1兆元を超えた従来型ECプラットフォームは、取引規模順に、アリババ(淘宝/天猫)が7兆1,900億元、拼多多(ピンドゥオドゥオ)4兆500億元、京東3兆5,400億元、ライブコマースがメインの中国版TikTok抖音(ドウイン)2兆2,000億元、そして快手(クアイショウ)1兆1,900億元の5社となっています。
アクティブユーザー数で見ると、1億人以上のアクティブユーザー数を抱えるプラットフォームは、アリババ(淘宝/天猫)が9億3,000万人、抖音7億6,100万人、拼多多7億1,900万人、京東5億500万人、微信(ウィーチャット)動画アカウント(視頻号)4億6,000万人、快手4億4,600万人、SNSの小紅書(RED)2億1,400万人の順です。
中国EC市場は、すでに急成長のフェーズは過ぎ、成熟と調整の段階に突入。ECに限らず、多くの業界で、オンラインが主力の販売チャネルとなっており、企業各社にとって、疎かにできない重要な競争市場となっています。
ネット上の公開データによると、アパレル業界では、オンラインでの販売比率が36%を突破。家電業界は約6割、コスメ業界は約5割、スナック食品業界も約2割に達しているようです。
目まぐるしく変化する中国消費ですが、2023年には、EC業界もいくつかの変化を経験しました。2023年11月29日に、米株式市場における拼多多の時価総額がアリババを追い抜き、アメリカで最も時価総額が高い中国企業となりました。
ショート動画の抖音や快手など、新興のECプラットフォームが台頭し、ライブコマースが急成長するなか、市場シェアのセグメント化が進んでいます。
中国のEC市場は、今後どのように発展し、競争はどのように変っていくのか?主要プラットフォーム各社はどのような戦略を採るのか?従来型EC、ライブコマース、インスタント・リテールなどの競合バランスはどう変化していくか?2024年には、どのような消費トレンドが生まれるか?こうした流れのなかで、企業各社はECをどう位置づけていくべきか?これらの疑問について、要点を整理しながら分析しています。
あの頃の中国ビジネス&生活(その16)は、2017年ごろに、ベンチャーキャピタルによる活発な投資もあり、“雨後の筍”のごとく新興ブランドが乱立した「オフィスコンビニ」についてです。
2016年にアリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏が、ネットとリアルを融合させた「新小売」というOMO(Online Merge Offline)概念を提唱して以降、続々と新興のビジネスモデルが登場。そうしたなか、新たなコンビニ形態で一気に普及したのが「オフィスコンビニ」です。
オフィスコンビニとは文字通り、コンビニをそのままオフィス内に移動させたもの。無人コンビニと異なる点は、普通のコンビニのようにオープン型の陳列棚が用いられていることで、冷蔵棚や冷凍ボックスを置く店舗もありました。
販売商品は、スナック類、飲料、カップ麺、パンなどオフィスでニーズの高いものがメイン。社員が商品に貼られたQRコードをスマホで読み込むと、商品情報と価格が表示され、支払いは微信支付(ウィーチャットペイ)や支付宝(アリペイ)などのスマホ決済を利用します。
いまや完全に淘汰された無人コンビニを尻目に、現在も残存しているオフィスコンビニ。コンビニというよりは、自動販売機に近い存在ですが、オフィスコンビニが一気に普及した背景には、設置スペースの賃貸料ゼロと社員の福利厚生があったようです…。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2024年1&2月合併号(vol. 111) もくじ
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【巻頭特集】2024年中国消費トレンド分析レポート
ニーズ多様化とメリハリ消費がますます顕著に
2024年の中国消費トレンドを大予測
【業界研究】中国EC業界分析レポート
拼多多(PDD)と抖音(TikTok)に勢い!
2023〜24年の中国EC業界を総括
【マーケティングコラム】あの頃の中国ビジネス&生活⑯
設置スペースの賃貸料ゼロで一気に普及
社員の福利厚生にも役立った「オフィスコンビニ」