会報誌2023年5月号(vol. 104)の巻頭特集では、中国で近年続出するコラボ(コラボレーション)マーケティングについて分析しました。
ここ数年、中国では異業種間のブランドやキャラクターなどのIP(知的財産)とコラボし、限定商品やイベントを展開して話題を呼ぶマーケティング手法がすっかり定着しています。新商品のプロモーションやブランド知名度アップ、新規・潜在顧客へのアプローチなど目的はさまざまでしょうが、それぞれに大きな効果を発揮しています。
近年のコラボ事例をみると、件数だけでなく、コラボの対象となる業界の数も増加の一途を辿っています。特に、食品・飲料やアパレルなどは、当初からコラボが盛んな業界ですが、最近では家庭用品や自動車、金融などの業界でも、コラボ事例が増加中。カフェ、アウトドア、ペットなど、当代のトレンドを代表する業界とのコラボが特に人気となっています。
コラボマーケティングは、ブランド同士によるコラボのほか、ブランドとIPによるものの2つに大きく分けられます。なかでも後者のIP とのコラボが最近は顕著となっています。中国でいうIPとは、キャラクターのみにとどまらず、アーティストや文化施設、博物館、漫画・アニメ、映画・バラエティ番組、さらにネット流行語など種類は多岐にわたります。
IPとのコラボは、SNS上などで大きな話題を呼べるほか、IPを通してブランドカルチャーを表明しながら、同時にブランド価値を高める効果も期待できるでしょう。
しかしながら、今や巷にさまざまなコラボが溢れている中国。消費者は似通ったコラボにいささか食傷気味になっているのも事実です。いかにして意外性のあるコラボを展開し、興味や趣味でつながるグループである「圏層」の枠を超え、新しい潜在消費者にアクセスするかが、今後の大きな課題となっています。
そこで今号では、近年中国でのマーケティング面で流行りのコラボマーケティングに着目。その目的やコラボの類型、トレンド、そして成功事例などを紹介しながら、日本企業にとってコラボマーケティング活用の参考になるようレポートしています。
次にアフターコロナの中国消費を読み解くべく、中国の消費者を世代・地域・新消費層別に分析しました。新型コロナを抑え込む「ゼロコロナ」政策が緩和され、消費喚起へと大きく舵を切った中国。不動産投資や貿易に先行き不透明感が増すなか、中国経済は大きな転換期を迎えています。
国連が公表した「2023年の世界経済情勢と展望」によると、2023年には、中国の経済成長率が前年比4.8%増に達すると見込まれています。外資系調査各社も概ね楽観的な予測を発表。英フィナンシャルタイムズと米シティバンクは共同で、2023年の中国消費品小売総額(小売高全体)が、前年比11%増の50兆元に達すると推算しています。
アフターゼロコロナが本格化した年明けから、中国では春節(旧正月)と5月1日(メーデー)前後の労働節という2つの大型連休がありました。いずれも消費回復の行方を見極める大きな契機となっています。
まず春節期間には、モノ(商品)とサービス消費がそれぞれ前年同期比10%増と13.5%増を記録。映画のチケット販売は、前年同期比11.9%増の67億6,000万元となり、史上2位の好業績を残しています。
国内旅行に出かけた人の数は、コロナ前の2019年同期の88.6%にまで回復。労働節の連休には、その数が2億7,400万人を突破し、国内旅行の総収入も1,480億5,600万元と、すでに2019年同期を上回る規模に達しています。
中国商業聯合会が公表した中国小売業景気指数でも、2023年5月は51.1。景気改善と悪化の分岐点である「50」を5カ月連続で上回っており、小売業界全体の回復基調が顕著となっています。
中国消費市場の回復は間違いなさそうですが、一方でいわゆる“リベンジ”になっているかどうかは議論が分かれるところでしょう。メディア等の報道では、アフターコロナの中国消費の回復が、当初期待したほどには達していないといった論調もあります。
そこで、改めて中国消費者の実態を把握することは、今後の中国事業展開にとっても重要な意義があると考えました。中国の消費者にスポットライトを当て、世代別、地域別、圏層(興味・趣味に基づく消費者グループ)別に分析しながら、14億人を抱える中国消費の実状に迫りました。
あの頃の中国ビジネス&生活(その9)は、便利・コトだけでなく、商品力でも勝負した盒馬(フーマー)についてです。
2016年にお店から3キロメートル圏内であれば、注文後30分内に無料でデリバリーするだけでなく、店内に設置された巨大な水槽から水揚げされた新鮮なロブスターやタラバガニなどをその場で調理して食べさせる…。スーパーでのコト(体験)消費のあり方を具現化し、中国人の度肝を抜かしたことは、前号でお伝えしました。
天井に張り巡らされたベルトコンベアしかり、巨大な水槽、新鮮な食材を使ったイートインコーナーなど、上海っ子に驚きと安心感を与えるには十分な斬新さとエンタメ性でした。
まずはお店に来てもらうという「つかみはOK」のフーマーでしたが、これで成功できたかというと、そうは“問屋がおろさない”…。消費者は最終的には理性的かつ合理的な消費行動を取るため、普段使いのスーパーとして支持されるには、結局のところ、商品力と価格のリーズナブルさが、一番の肝となったのですが…。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2023年5月号(vol. 104) もくじ
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【巻頭特集】中国コラボマーケティング分析
中国でIP、異業種、老舗コラボ続出
成功事例から学ぶ中国コラボマーケティング
【消費者研究】世代・地域・新消費層別分析
2000年代生まれ「00後」世代も頭角現す
消費者研究から読み解く中国消費市場の未来
【マーケティングコラム】あの頃の中国ビジネス&生活⑨
「日日鮮」シリーズで健康・品質ニーズにも対応!
便利・コトだけでなく、商品力でも勝負した盒馬(フーマー)