会報誌2022年7&8月合併号(vol. 96)の巻頭特集では、アウトドア市場を取り上げました。新型コロナの流行で、海外や省外への遠出旅行が困難となり、近場に新たな行先を求めるようになった中国人。旅行気分を味わえ、身体を動かすこともできる上に、社交性も高いアウトドアのスポーツやアクティビティに人気が集まっています。
これまでランニングや登山、バイク(自転車)など専門的な装備や体力を必要とするイメージが強かったアウトドアですが、近年中国で注目されているのは、気軽に参加できる新しいアウトドアスポーツのほう。都市の近郊でピクニックやキャンプ、サップ(SUP ※スダンドアップ・パドルボードの略)などを楽しむ人が増えつつあります。
中国で「微度暇」と称される“プチ・ホリデー”的なアクティビティは、身近な環境を活用するのが大きな特徴です。キャンプも森林や砂漠、草原などにわざわざ足を運ばず、都市周辺で楽しむのがトレンド。ちょっとした自然のなかで心身を解放して身体を楽しく動かすことが、今の若者のアウトドアスタイルといえるでしょう。
また北京冬季オリンピックが開催されたことにより、スキーなどスノースポーツの人気も高まっています。スキーやスノーボードを始める若者が急増。春から秋はキャンプ、冬にはスノースポーツと、アウトドアスポーツが大きなトレンドとなっています。
旅の攻略法などの情報を発信するプラットフォーム「窮遊網」(m.qyer.com)によると、アウトドア系の旅が人気を集め始めたのは2020年とのこと。キャンプは前年比で303.5%増、キャンピングカーの旅は243.5%増、ドライブ旅行は78.6%増、徒歩や自転車の旅もそれぞれ32.6%増、21.7%増と成長したようです。
新しいアウトドアシーンの広がりは、アウトドアレジャー市場にとって大きな商機となっています。中国調査会社の華経産業研究院は、中国のアウトドア用品市場規模は2020年時点で約1,700億元に達し、2025年には2,400億元を超えると見込んでいます。
そこで今号では、現在中国で最も人気の高いキャンプを中心に、アウトドアレジャーの愛好者イメージ像のほか、同市場の発展や変化を分析。また主なアウトドアブランドの状況から、中国国内で人気のライフスタイルやアウトドアレジャー市場の商機についても分析しました。
次に、こうしたアウトドア熱を背景に高まる紫外線対策ニーズを見事に捉え、急成長している新興ブランドでUV(紫外線)カットアパレル及びグッズの「Beneunder蕉下」にフォーカスしました。
コスメジャンルのKOL(キーオピニオンリーダー)や企業・ブランドによる“布教”の影響もあり、中国で夏だけのものだったUV対策が1年を通して欠かせない日常習慣へと変化しつつあります。特にアフターコロナになってからは、キャンプやフリスビー、釣りなどのアウトドア・アクティビティの人気が急上昇するなか、紫外線対策の重要性はさらに高まっています。
中国版インスタグラムとも称されるSNSプラットフォームの小紅書(RED)上には、中国語で「防晒」というUVカット関連の投稿コンテンツ数が442万件超。また中国版TikTokの抖音(ドウイン)上では、関連動画が164億回以上も再生されています。
ユーロモニターによると、2021年の世界と中国のUVカットコスメ市場規模はそれぞれ794億元と167億元だったもよう。また2012年から2021年の9年間のCAGR(年平均成長率)はそれぞれ0.9%と10.5%で、中国市場の成長率が世界を大きく上回っていることがわかります。
UVカット商品はコスメだけに限りません。日傘などで物理的に紫外線を遮断することを中国では「硬防晒」(※硬はハードの意)と称し、日傘のほか、帽子、UVカット服、アームカバー、手袋、サングラスなどが含まれます。一方、日焼け止めクリームなどのUVカットコスメは「軟防晒」(※軟はソフトの意)と称されます。
ここ数年、「硬防晒」のほうがより安全性が高く、より高いUVカット効果が期待できるとのことで、ネット上で注目を集めています。今年の夏、中国では例年にも増して高温の日が続いており、街には全身をUVカットファッションで“包んだ”若者どころか、子供から中年女性まであちこちで見受けられるようになりました。
中国コンサルティング会社CIC(灼識諮詢)によると、中国のUVカットアパレル市場は、2016年の459億元から2021年には611億元にまで成長。2026年には958億元規模になると見込んでいます。
UVカットアパレル市場の潜在性に目を付けたユニクロやANTA(安踏)などの大手スポーツアパレルメーカーのほか、「Beneunder蕉下」、「oh!Sunny」、「uv100」など新興ブランドも続々と誕生するなか、特に注目株といえるのが、Beneunder蕉下です。
2012年に日傘ブランドとしてスタート。2022年の「618」セール(※6月18日前後に開催される大型ネットセール)で、取引額1億9,000万元を記録。天猫(Tモール)のアウトドア・アパレルアクセサリー部門でもトップとなり、一躍中国でUVカットグッズのトップブランドに躍り出ました。
そこで今号では、このBeneunder蕉下の商品ラインナップやブランドポジショニング、マーケティング手法、販売チャネル・運営戦略などについて分析し、いかにマイナー(ニッチ)市場でニーズを掴み、UVカット業界のトップブランドにまで成長したかについて分析しました。
トレンドウォッチでは、毎年恒例の上半期最大の「618」セールから中国消費トレンドを読み解きました。コロナ等の影響で例年ほどの賑わいは感じられなかった618セールですが、セール全体の実績データを見ると、取引総額は昨年よりもさらに増加している点は注目に値します。
ビッグデータ調査会社の星図数据(SYNTUN)によると、2022年618セール期間中のネット全体の取引総額は6,959億元で、前年の5,785億元より20.3%増を記録。またECプラットフォーム大手で唯一取引額を公表した京東(JDドットコム)の取引額も3,793億元の新記録で、前年比10.3%増と成長を示しています。
ビッグデータ分析会社の魔鏡市場情報(MKTINDEX.COM)によると、天猫(Tモール)も2,425億元の取引額だったもよう。さらに動画関連データツールの飛瓜数据(feigua.cn)によれば、抖音(TikTok)と快手(クアイショウ)の618セール期間中の取引額は、前年比でそれぞれ656%と515%増と成長。なかでも抖音は、ライブコマースの配信時間が累計で4,045万時間に達したようです。
リアル業態でも、618セール期間中の取引額が前年比514%増となりました。なかでもアリババが買収した百貨店大手で浙江省を本拠とする銀泰百貨は、618セール期間中に来店者数が第2四半期のピークを記録しました。
新型コロナをはじめとする様々な要因の影響を受け、中国消費市場の成長は一定のマイナス圧力を受けています。一方で、中国人の消費規模の拡大傾向や消費のアップグレードトレンドは基本的に変化していないとも見て取れます。
そこで今号では、今年の618セールの実績データをもとに、その変化や注目点の詳細な分析を通して、現在の中国の消費トレンドを10個ピックアップして解説しました。
最後に、マーケティングコラムでは、あの頃の中国ビジネス&生活をテーマに、日中両国間のネット事情とスマホ決済について取り上げました。
1979年頃から始まる改革開放政策で、まさに“イケイケドンドン”で急成長してきた中国経済。特に2001年の中国WTO(世界貿易機関)加盟以降、多くの日本企業がこぞって中国に進出。さらに2004年に施行された「外商投資商業領域管理弁法」で小売流通市場が外資に解禁され、世界の“工場”から“市場”へとシフトするなか、中国進出ブームが日本で起こりました。
あれから約20年。ちょうど初めて上海に赴任してから生活してきた期間と重なりますま。ネット通販やスマホ決済が普及する一方で、中国経済の先行き不透明感が増すなど、中国事業環境も大きく様変わりしています。
そこで改めてこの20年間の移り変わりについて、中国ビジネスや生活の“あの頃”を振り返ります。スマホ決済やシェア自転車がいかに普及したかなど、中国で生活していたからこそ肌身で感じられた経験や体験をもとに解説していきます。
そのほかにも、中国の消費やマーケティングに関するインサイト情報やデータが盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2022年7&8月合併号(vol. 96) もくじ
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【巻頭特集】中国アウトドア市場調査分析レポート
コロナで近場の“プチ・ホリデー”ニーズ高まる
キャンプ中心に空前のアウトドアブーム到来
【注目企業ピックアップ】新興ブランド「Beneunder蕉下」分析レポート
アウトドア熱の高まりで紫外線対策が“日常”に
UVカット分野で一躍トップに!「Beneunder蕉下」
【トレンドウォッチ】618セール消費トレンド分析レポート
スマート、健康、エコロジー、こだわりがホットに
618セールの実績から読み解く中国消費トレンド
【マーケティングコラム】あの頃の中国ビジネス&生活①
日本でのマーケティング経験が全く通用しない?
実は不信感や抵抗感が強かったスマホ決済