会報誌2015年10月号(vol.28)では、巻頭特集に「富裕層」を取り上げました。中国経済の減速が顕著になるなか、習近平政権による倹約令や公費接待禁止により、以前と比べ「富裕層」の存在感が薄まっている感があります。
一方で、90年代からの中国経済成長により、市民生活の質は順調に上向いており、とりわけ、「新富裕層」「中間層」「富裕中産階級」など新たな“ニューリッチ”層の台頭が著しいのも事実です。彼らは富裕層と同様にブランド品や高級車への興味を持ちつつも、旅行や家族との時間、子女教育などをより重視している傾向があります。
昨今の中国人観光客による「インバウンド」消費もこうした新消費者層が繰り広げている現象ともいえ、GDPなどの経済指標だけでは把握できない中国経済の本質を徐々に変えているこの層の実態を把握することが重要であると考えています。
そこでこうした新興富裕層の人数や増加率、年齢、学歴、職業構成から幸福感や趣味、所有自動車や不動産、理財商品などから消費傾向を分析し、家電消費に関するケーススタディとして5名の対象者に対するヒアリング結果を紹介しています。
トレンド・ウォッチは、毎年秋の風物詩、中秋節の贈り物「月餅」に関するトレンドの変化にスポットライトを当てました。以前は政府関係者や取引先など高額な月餅やハーゲンダッツのアイス月餅引換券が出回っていましたが、この“贈り物”文化も倹約令や反腐敗などの政策の影響をもろに受けていることは否めません。
カルフールやウォールマートなどスーパーの月餅売り場も「親民平価(庶民価格)」なるスローガンの下、100〜200元の月餅セットが店頭に並べられ、ばら売りの棚も設置されるほど。こうした変化は、月餅の代わりにケーキを贈るというトレンドにも派生しています。ネット注文を主とする21caseやLe Cakeなどがケーキ交換券を発行するなど、月餅市場の変貌から見られるベーカリー業界の現状についてレポートしました。
現地企業のインタビューでは、中国ヘアサロン業界の現状と展望について業界関係者にインタビューしました。2014年時点で300万店のヘアサロンが存在する中国。そのうち約51%がここ5年間で開業したとされ、年間5.84%の成長率で、従業員数は2000万人超、売上高は1兆元を超えるとされています。
この急成長を支えるビジネスモデルがプリペイドカード方式や会員制による店舗経営。いずれもキャッシュフローの増加と投資資金の迅速な回収を促し、さらなる店舗網拡大への投資資金にしていくという一種の“自転車操業”モデルですが、そうしたやり方にも限界が見え始めています。今後はより消費者のニーズに合致したきめ細かなサービスや施術が必要とされますが、その現場の実態はいかに…。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
vol.28(2015年10月号) もくじ
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【巻頭特集】
『ライフスタイル向上や家族を大事にする新興富裕層』
中国で芽生える新たな消費モデルとビジネスチャンス
【トレンド・ウォッチ】
『月餅は「ロープライス」「オリジナル」がキーワードに』
月餅市場の変貌から見る中国ベーカリー業界
【インタビュー】
『プリペイドカード商法の成功と今後の道』
中国ヘアサロン業界の現状と展望
【都市別調査】連雲港編
『孫悟空の故郷 蘇寧広場が大盛況』