会報誌2017年10月号(vol.48)では、巻頭特集に中国越境EC業界で突如として頭角を現した「網易考拉海購(Kaola.com)」(以下、網易考拉)を取り上げました。
90年代の中国インターネット創成期に、雅虎(Yahoo)や新浪(Sina)、捜狐(Soufu)等と並び大手ポータルサイトの一角を担った「網易(NetEase)」。無料メールサービスの「163.com」が全土に広く普及しながら、どこか“二・三番手”のイメージが拭いきれませんでした。
検索エンジンの百度(Baidu)やネット通販のアリババ系淘宝網(Taobao)、さらにはテンセントのQQなど「BAT」が中国ネット業界を牛耳るようになるとともに、「ポータルサイト」が時代遅れになるにつれ、網易の存在感も日増しに薄れていきました。もはや忘却の彼方へ葬り去られた感のあった「網易」ですが、久しぶりに再登場したのが越境EC。なおかつ、ネット通販の両雄である天猫と京東を凌ぐ勢いがあるとのこと。
市場調査コンサルのiiMedia Research(艾媒諮詢)が公表した「2016-17中国越境EC市場研究報告」によると、16年の越境EC輸入小売業の売上シェアにおいて、網易考拉が全体の21.6%を占めトップに。(天猫国際と唯品国際が、それぞれ18.5%と16.3%で続く)また、ユーザー満足度とスマホ海外通販ユーザーの正規品保証信頼度でも第1位に選ばれたそうです。
同じくiiMedia Researchの「2017上半期中国EC全体ランキング」でも、網易考拉は、業績、ユーザー体験、満足度、メディア影響力等の各方面で、傑出した評価を獲得、「中国越境EC総合競争力ランキング」で第一位に選ばれています。
このように突如としてまた““復活”を遂げた網易の越境EC部門。その復活を実現せしめた戦略や秘訣、方法は何だったのでしょうか。彼らの斬新的な商品調達から価格設定、プロモーション、配送網に至る創意工夫について、調査・分析しました。
次に、業界研究で中国スマートフォン(スマホ)端末市場をピックアップしました。15年以降、急成長を続ける中国国産スマホメーカー。小米(シャオミ)を皮切りに、華為(ファーウェイ)、OPPO、vivoなどが頭角を現し、世界のスマホ市場を圧倒的にリードしていたアップルとサムスンを脅かす存在になりました。
実際にアイフォーンの中国での販売台数は6四半期連続で減少、サムスンは更に低迷。調査会社Canalysの報告によると、17年第2四半期の中国スマホ出荷台数は1.13億台。そのうち、華為が2300万台で最も多く、OPPOが2100万台で第2位、vivoが1600万台で第3位、小米が1500万台で第4位だったとのこと。アイフォーンの中国での市場シェアはすでに第5位にまで後退。国内スマホ市場での中国国産ブランドのシェアは87%にまで高まっているそうです。
そうした中、16年以降、特に「OPPO」の躍進が際立っています。OPPOはここ2年間、中国のほとんど全ての人気テレビ番組にスポンサーとして名を連ね、駅やバス停、空港なども同社の広告で溢れるほどです。
2001年設立の同社が、携帯電話端末に参入したのは08年。スマホ販売台数は12年の890万台から、13年1300万台、14年3000万台、15年5000万台、そして16年に7840万台と着実に成長。16年第3四半期に中国スマホ市場の出荷台数で初のトップに。17年第2四半期の全世界での売上も第4位に入るなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長しています。
競争が熾烈な中国スマホ端末市場で、OPPOがいかに生き馬の目を抜く成長を遂げたのか。その原動力について、ターゲット都市や客層の選定、製品、販売(代理店)網、プロモーションなどを含むマーケティング戦略について洞察しました。
今号では業界研究として、中国オンライン旅行市場も取り上げました。中国経済の発展に伴う国民の可処分所得上昇により、高まり続ける旅行ニーズ。16年の中国国内旅行者数は、前年比11%増で44.4億人に。また海外旅行に出かける人の数も、前年比4.3%増の1.22億人に達したもよう。海外旅行による消費も5.1%伸び、1098億米ドルとなりました。
そうした中、最も成長に勢いがあるのがオンライン旅行市場です。旅行や航空券、ホテルの予約から、春節や国慶節など大型連休の移動の手配に至るまで、スマホの旅行アプリを利用するユーザー数は着実に増加中。IT及びネット分野の研究機関である速途研究院の統計によると、16年の中国オンライン旅行取引の規模は6342.5億元に達し、前年比37%の成長を記録したそうです。
スマホを介したビジネスが活況を見せる中国。その先達として、早くから普及が進み成熟した感すら帯びるオンライン旅行市場。その実態と今後の動向について、統計データをもとに解説しています。
中国コンビニ最前線レポートは、中国チェーン経営協会と米系ボストンコンサルティングが共同で17年5月に公表した「2017中国コンビニエンスストア発展報告」について。
15年に9万1000店だった中国のコンビニ店舗数は、16年に前年比9%増の9万8000店に拡大。また業界全体の売上も、15年の1181億元から13%増の1334億元を記録。チェーン経営のコンビニブランド数は260超。そのうち、メジャーとされるブランドが62を数え、それら主要ブランドの店舗数は合計で8万5748店を数えているようです。
日系では、全家(ファミリーマート)が1810店で第7位。セブン-イレブンが1371店で第11位、羅森(ローソン)が1003店で第14位とトップ20にそれぞれランクイン。特に注目すべきは、いずれも店舗数の伸びがそれぞれ20.6%、242.8%、79.5%と他チェーン店と比べて突出している点。中国でのコンビニ展開を積極化している日系3社ですが、この成長市場を虎視眈々と狙っている地場系ブランドの存在も侮れません。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
vol.48(2017年10月号) もくじ
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【巻頭特集】
『網易考拉海購(Kaola.com)が中国越境ECのトップに』
「正規品・低価格・サービス・斬新さ」で人気爆発
【業界研究】中国スマホ端末市場
『チャネルの優位性と強気のマーケティングでOPPOが市場を牽引』
中国国産スマホが大躍進、アップル・サムスンは時代遅れ?
【業界研究】中国オンライン旅行市場
『レジャーと農村旅行者がブルーオーションに』
急成長を遂げる中国のオンライン旅行市場
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『市場が拡大する中で日系3社の店舗数が突出した伸長率示す』
「2017中国コンビニエンスストア発展報告」公表
【都市別調査】
高まる健康志向 〜その①
『「天然」「健康」トレンド 関連産業の成長にも波及』