会報誌2018年5月号(vol.54)では、巻頭特集に中国の「ネット内装」を取り上げました。中国語で「互聯網装修」と呼ばれるネット内装。単なる内装業者の仲介サイト程度かと思いきや、15年3月に中国政府が提唱した「インターネットプラス(互聯網+)」戦略、つまりインターネット技術を活用した新たな産業政策に即した新しいビジネスモデルだったのです。
中国ネットリサーチ大手のiResearchが発表した「中国インターネット住宅内装業界研究報告」によると、中国ネット内装業界が急成長しており、ここ数年の年間平均成長率は25%強を維持しているとのこと。しかしながら、17年の市場規模は2461.2億元で、内装業界全体のわずか5%程度のみ。今後の発展に大きな期待が寄せられています。
近年は小幅な成長にとどまっている住宅不動産市場。巷では不動産不況とも叫ばれているようですが、実際には、住宅の施工及び竣工面積は、依然高い水準を保持しています。16年の全国の住宅施工面積は66.1億㎡、竣工面積は17.1億㎡。施工面積は12年以降毎年60億㎡超、竣工面積にいたっては、07年以降ほぼ横ばいで推移しています。
このように安定した住宅供給を背景に、内装市場の主力消費層として存在感を示しはじめているのが、婚姻適齢期を迎えつつある「80後」(1980年代生まれ)や「90後」(1990年代生まれ)世代。中国のインターネット普及期に共に成長、スマートフォン(スマホ)や電子決済に何ら抵抗のない彼(彼女)らが、内装業界でもオンラインとオフラインを融合した新しい消費モデルを求めるようになっています。
また新しい技術やサービスだけでなく、「自分」だけのカスタムメイドやエコロジー、品質などに対するニーズも多様化が進んでいます。さらに、昨今の中国消費トレンドの特徴の一つである「消費昇級(アップグレード)」、つまり少々割高でもよりよいモノやサービスを求める消費者が増える中、ネット内装業界でもその傾向が如実に現れています。
では「ネット内装」とは何なのか?簡単にいうと、消費者や内装業者、さらには建材や家具メーカーから集めたビッグデータをベースに、クラウドコンピューティングや3D設計技術を駆使し、VR(仮想現実)世界の中で建材や家具を選択しながら完成イメージ図をビジュアル化。あたかもそこで新生活を始めたかのような“疑似体験”ができるというもの。
またそれは、従来のメーカーや業者がオススメして選ばせるという販売モデルから、消費者が自ら自分たちの好みや予算から選んだものを、そのままネット経由でオーダー。そうしたニーズを、ビッグデータを通してあらかじめ生産したうえで、近くの倉庫に配置しておくという「C2F(Customer to Factory)」方式も採用されるなど、消費者目線からのサプラチェーンの整備も進んでいます。
このように、当初のイメージを遥かに超越する中国のネット内装業について、住宅内装市場全体の概観から、内装業者のネット化やプラットフォームの発展経緯、セグメント別のリーディング企業、サプライチェーンや施工・工事の監督管理、主なネット内装企業の紹介、ユーザー像(年齢、都市、学歴、家族構成、予算など)、そして今後の動向について調査・分析しています。
次に、業界研究でフォーカスしたのが中国ペット市場。マンションや公園などで、犬を散歩させる人だけでなく、かわいらしい服を着せた犬の姿も、すでに見慣れた光景になっています。急拡大するペット市場は、ペットフードだけでなく、各種ペット用品からスナック(おやつ)、さらには1000元前後もするペット服まで幅広く波及。いまやその成長は、とどまるところを知らない様相となっています。
あるレポートで、中国ペット市場の発展は2010年を契機とし、17年の中国ペット市場の規模は1340億元。10年からの年間平均成長率は30.9%で、19年には2000億元に達すると予想されています。
かつては、子供が巣立った寂しさを紛らわせるためにペットを飼う高齢者が主流だったペット市場。それがここ数年、若年化が急速に進行し、80後や90後世代の若い人たちが主力となりつつあります。高所得層も多く、昨今の「消費昇級(アップグレード)」トレンドも、ペット市場全体の成長を後押ししています。
ペットを単なる“穴埋め”的存在から、「家族」の一員として接する消費観の変化も、特筆すべき風潮です。人と人との交流や距離感が希薄化する現代社会において、特に若い世代を中心に、心の孤独を埋める存在を求めるようになっている中国。こうした変化が、ペットへの寵愛をさらに増長させ、フードや関連商品のみならず、サービスやヘルスケアなどの面でもニーズが増大。ペット市場は周辺の付属的な分野も含め、今後も巨大な潜在可能性を秘めています。
このように今後も“幾何級数”的に成長が見込める中国ペット業界について、市場全体の概況(飼い主の人口や属性、ペットの種類、市場規模など)、ペットの「家族化」の背景、ペット関連消費の実態(ペットフード、スナック、関連用品、医薬品・健康食品など)、購入チャネル、関連サービス(医療、美容、ホテル、しつけ、葬儀など)、情報収集チャネル、今後の動向について、各種レポートやアンケート結果をもとに洞察しています。
トレンドウォッチでは、中国でも流行りの「抹茶」をピックアップ。古くは唐の時代に日本に伝えられたとされる抹茶ですが、中国でも「和」や「京都」といった「日本」をイメージする消費者が多いようです。中国各地にこうした和風の抹茶カフェが続々と誕生し、若者を中心にファン層が拡大している抹茶人気の背景と理由について、人気抹茶スイーツ店の紹介とともに分析しています。
中国コンビニ最前線レポートは、広東省・中山と汕頭(スワトウ)のコンビニ事情について。28年連続で中国トップのGDPを維持する広東省。世界的に見ても、1998年にシンガポール、2003年に香港、07年に台湾を抜き、16年にはメキシコとほぼ同じ、スペインにも肉薄するほどの経済規模を誇ります。
こうした経済発展を背景に、消費現場は中国の他都市とは異なる独特な発展を見せている広東省のコンビニチェーンについて、中山発の「及時」と汕頭の「爽客」をピックアップ。現地視察時の店内の写真とともに、両チェーン店の運営状況や取り組みなどについてお伝えしています。
そのほか、以下のとおり、中国マーケティングやECに関する情報が盛りだくさんです。
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ニュースレター冊子『チャイナ・マーケット・インサイト』
2018年5月号(vol.54) もくじ
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【巻頭特集】
『住宅内装業界にもIT化の波が押し寄せる』
中国ネット内装市場が急拡大
【業界研究】
『ペットの「家族化」でさらなる成長を見込む』
中国ペット市場徹底分析
【トレンドウォッチ】
『健康、美味、見栄えの良さが若者のニーズにマッチ』
中国でも日本の「抹茶」がブームに
【小売・流通現場】中国コンビニ最前線レポート
『1億超の人口ベースに店舗急拡大の広東省は中国コンビニの試金石』
広東省・中山と汕頭(スワトウ)のコンビニ事情
【都市別調査】
広東省都市めぐり ~その④
『一帯と一路の結節点 消費先進都市、珠海』