会報誌2022年1&2月合併号(vol. 91)の巻頭特集では、“内向き”を強める2022年の中国消費動向を洞察しました。新型コロナの影響からほぼ脱した感のある中国。2021年1~9月期のGDPは前年同期比9.8%増と成長し、中国人1人当たりの平均可処分所得も9.7%増、消費支出も前年比15.1%増でした。
中国の消費者も、今後2~3年の消費に前向きな姿勢を示しています。独戦略コンサルティング企業のローランド・ベルガーが、京東(JDドットコム)と共同で2021年12月に実施したアンケート調査によると、回答者の34.3%が今後2~3年の消費支出が収入全体の50%以上になると予想したようです。
一方、繰り返し発生する新型コロナの局地的な感染拡大や世界情勢の不確実性などから、中国人の消費行動には「保守積極」、すなわち消費意欲は依然強いが、同時に保守的な考えも内在するとの指摘もあります。ブランドや商品の品質や性能など有形の価値とともに、イメージや満足といった無形の価値も重視するようになっています。
2021年、中国インターネットユーザーの月間ネット使用時間は148時間に達しました。店舗側のDX(デジタルトランスフォーメーション)と顧客接点のオンライン化が、消費者の意思決定にも大きな変化を及ぼしています。
顧客接点の場がスマートフォン(スマホ)に集約されるなか、企業もコンテンツマーケティングやEコマース広告、SNS(ソーシャルメディア)等でのフロー型広告をより重視。特にライブ動画とショート動画が、プロモーションの場として多くの注目を集めています。
人々の消費トレンドに目を向けると、中国で「M型消費」と呼ばれる、高品質・高価格の「高級品」と、質より量重視の「量販型」の二極化が進行。カスタマイズやパーソナライズ(個性化)のためならより多くの支出も厭(いと)わない人が増え、自分らしさを表現できる精細なソリューションの提供が求められています。
中国でも核家族化の傾向が顕著に見られ、おひとり様経済、ペット経済、ブラインドボックス(盲盒)経済、顔面偏差値(ビジュアル)経済などと呼ばれるニッチな市場が成長。シニア層のネットユーザー化も進み、50歳以上の中高年ネットユーザーが全体に占める割合は、2020年6月時点で28%(2億8,000万人)に達しました。
また大都市に人口が集中し、1人当たりの居住面積が縮小した結果、アウトドアやバーチャル空間が人気となり、キャンプやメタバースなどの新しいコンセプトにも注目が集まっています。
アフターコロナの時代を迎え、社会環境がガラリと変わるなか、消費者の価値観にも大きな変化が生まれている中国。こうした変化と新たな消費ニーズから生み出される消費トレンドについて、「価値観」と「商品」から考察し、2022年の中国消費動向を大解剖しています。
次に、“鎖国”で独自の発展が進む中国小売・流通業界を分析しています。2013年以降、世界最大のEC市場規模となっている中国。2016年頃から、デジタル技術を駆使し、オンラインとオフラインを融合した「新小売」(ニューリテール)が、中国小売・流通業界の大きなトレンドとなっています。
2020年には、新型コロナで実体経済が大きな打撃を被り、小売市場のオンライン化がさらに進みました。新小売の発展を支えたデジタル技術のほか、ライブコマースなどの新たなマーケティングツールの普及に伴い、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)化を敢行しました。
2021年に入ると、中国の消費市場は新型コロナの影響からほぼ脱却。社会消費品小売総額(小売全体)は前年比12.5%増の44兆823億元。実物商品のネット小売額も前年比12%増の10兆8,042億元でした。小売全体に占めるネット小売の割合も24.5%となり、2020年の水準を維持しています。
2021年6月時点で、中国のネットユーザー数は10億人を突破。そのうちネット通販ユーザー数は8億1,206万人で、全体の8割強を占めていますが、これはつまり、ネット通販から生まれる新たなトラフィック増が期待できなくなってきていることを意味します。ECプラットフォームだけでなく、ECショップを運営する企業にとっても、今後いかに成長を維持するかが課題となりつつあります。
中国で普及するモバイル環境を背景に、消費の主力層になりつつある1995年以降2000年代生まれの若いZ世代。人口は2億6,400万人で中国総人口の約19%。彼らはSNSや動画を好み、個性や見た目(ビジュアル)を重視し、目新しいモノや趣味・興味のための出費を厭(いと)わない傾向にあります。Z世代の心をつかむことが、ECプラットフォームや企業にとって最重要課題となりつつあります。
中国政府が規制を強める独占禁止政策により、空前の圧力にさらされている中国EC・ネット業界。中国EC市場は、ショート動画の抖音(ドウイン・TikTok)や快手(クアイショウ)、ソーシャルコマースの小紅書(RED)など、コンテンツをメインとするアプリもネット通販に参入するなど、新たな競争局面に入っています。
さらに、新型コロナで鬱憤がたまる中国人の“出掛けたい”ニーズを反映してか、体験(コト)消費の人気が高まりつつあり、オフラインのリアル小売業態も復活の兆しを見せつつあります。これがまた中国EC業界にとって、新たな競争圧力となっていきそうです。
このような事業環境の下、中国の小売・流通業の現状を把握・分析した上で、今後の動向について洞察。ECプラットフォームとブランド(企業)の両面から、詳細に分析しています。
そのほか、以下のとおり、中国消費やマーケティングに関する情報が盛りだくさんです。
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会報誌『中国消費洞察』
2022年1&2月合併号(vol. 91) もくじ
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【巻頭特集】2022年中国消費動向調査分析レポート
中国ビジネスは「各量生産・各量販売」の時代に!
“内向き”強める2022年の中国消費動向を洞察
【業界分析】中国小売・流通業界調査分析レポート
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【マーケティングレポート】注目 KEY WORD
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