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【第539回】 10億人を擁する巨大な“ライジング”「下沈市場」

下沈市場で輸入品も徐々に浸透、日韓が国別でトップに

2022年9月28日更新

三線(級)都市の銀川(寧夏回族自治区首府)
 中国のECや小売流通業界がフロンティアとして注目する「下沈市場」。中国の三線(級)以下の地方都市と農村部を指し、10億人の人口を擁する巨大な“ライジング”市場です。

 下沈市場の消費行動について見ていきましょう。中国クラシファイド広告サイト・58同鎮の「2020年中国下沈市場FMCG洞察報告」によると、FMCG(Fast Moving Consumer Goods)、つまり日用消費財の買い物をする場として、オフラインでは大型スーパーを選んだ回答者が全体の65%で最も多く、一般・ミニスーパーが43.6 %で続いています。理由は、品揃えが豊富で管理面で信頼がおけるからのようで、コンビニが28.2%とまだ伸び悩んでいる点が興味深いです。

 一方、オンラインでは、淘宝(タオバオ)や京東(JDドットコム)など総合型のECプラットフォームが94%で他を圧倒しています。ソーシャルコマースやライブコマースがそれぞれ30 %前後で続いていますが、ネット通販で最も重視するポイントが物流速度と答えていることから、EC大手の物流インフラに対する安心感が関係していそうです。ちなみに越境ECは5.5%とまだ“これから”の状態です。

 ネットで消費する際の情報収集チャネルについて、モバイルデータサービス・Talking Dataの「下沈市場業界現状洞察」によると、ECサイトや検索、口コミ、商品評価サイトなどと答えていますが、面白いことに、こうした情報はあまり信頼していないとも。知人に聞いたり、推薦されたり、また実際にリアル店舗で商品を確かめるといったほうをより信用する傾向が見られます。中国で「熟人経済」と呼ばれる、知人の影響で消費するエコノミーが、下沈市場の大きな特徴の一つといえるでしょう。

 下沈市場の消費者は依然価格に敏感なようで、ディスカウントに最も影響されやすいと回答。また7割近くが、ブランド間でコスパを比較する一方で、常に同じブランドを購入し、価格は考慮しないと答えた人はわずか12.4%にとどまっています。

 ネット通販については、中国調査会社・艾瑞諮詢(アイリサーチ)の「2021年中国下沈市場Eコマース研究報告」によると、半数以上が週に1~3回と答え、毎日も10.5%に達しています。ネット上で着目する商品は、最近流行っているものと答えた人が全体の63.1%に達している一方で、低価格でコスパが良いやディスカウントされているかの回答もそれぞれ59.3%と57.1%と、やはり価格重視の傾向が垣間見れます。

 輸入品も徐々に浸透しつつあるようで、64%が外国製の日用消費財を購入したことがあると回答。好んで消費する輸入元の国・地域別では、日本・韓国(40.4%)がトップで、その後、欧州(27.4%)、アメリカ(18%)、オーストラリア(18%)と続いています。

 近年流行りのライブコマースについて、視聴したことがあると回答した人は49.1%と半数を割っている状況。購入を検討している商品の詳細な情報を得ると答えた人は60.4%で、なにか良い商品がないか探すとした人も59.4%に達しています。一方、ライブコマースを視聴したことがないと答えた人のうち、42.6%がライバー(ライブの配信者)が紹介する商品情報に虚偽があると、また18.7%はライブコマースで購入した商品にはニセモノが多いと感じているようです。

銀川随一の繁華街・銀川商城商圏

寧夏回族自治区で最大級のモスク「銀川南関清真大寺」
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