中国消費洞察オンライン〜中国ビジネスをマーケティング視点から再構築!
92%のお茶“素人”をターゲットにイメージ戦略で差別化

中国ティーバッグのトップブランド「CHALI(茶里)」

2022年8月10日更新

高級ティーバッグとして人気の「CHALI(茶里)」
 2020年に前年比155%増の128億元となり、急成長した中国ティーバッグのネット販売。2021年にはさらに148%増で319億元と見込まれる中、この急成長を支えているのが、新興の国産ブランドの数々です。

 そうした新興ブランドのうち、特に注目なのが高級ティーバッグとして人気の「CHALI(茶里)」です。2013年設立のCHALI(茶里)は、中国消費トレンドの波を見事に読み当て、着実に同市場内でのポジションを築き上げました。

 CHALI(茶里)がまず取り組んだのが、茶葉の高級感です。リプトンなど海外ブランドが採用するCTC、つまりCrush(潰す)、Tear(引き裂く)、Curl(丸める)という加工がされた粉末茶葉は、中国では低級な茶葉と見なされています。

 そこで、CHALI(茶里)は摘みたての砕かない高級茶葉を採用し、なおかつトウモロコシの繊維を使った半透明のテトラパックを使うことで、ティーバッグの中身を丸見えにしました。これが、より良いモノを求める中国消費者の「消費昇級」(消費アップグレード)トレンドにマッチしました。

 また中国で「顔値」と称される顔面偏差値。つまり若者を中心にビジュアルの良さを特に求める風潮が広がるなか、パッケージもピンクやオレンジ、黄色、緑など爽やかなカラーをベースに、見た目にもこだわり、高級感を演出しました。この外観の違いが、写真映えを気にする若いネット世代にも受け、SNSでバズる“網紅”(ワンホン)商品となりました。

 CHALI(茶里)のマーケティング戦略も注目に値します。茶葉に対する認知度に応じて、消費者を0級から4級までの5段階にクラス分けします。0級は紅茶や緑茶などの名称は知っているが、専門知識に乏しく、お茶は健康にいい程度の知識しか持たない人たちですが、この層が実に市場全体の92%を占めていると分析しています。

 よって、ある程度の知識を有し、なおかつ香りや味わいにこだわる消費者は、残りの8%のみなのですが、CHALI(茶里)はこの8%を捨て、92%の“素人”をターゲットに絞りました。結局のところ、こうした素人層は若者がメインとなるわけで、茶葉に関するうんちくではなく、CHALI(茶里)を飲むこと自体をいかにトレンド化させるかというイメージ戦略で差別化を図りました。

 芸能人やインフルエンサーを通したSNSマーケティングを積極展開するとともに、若者が好むバラエティ番組やドラマを協賛し、アニメやゲームのほか、家電やインスタント火鍋など異業種コラボで露出を高めました。ライブコマースでも、淘宝(タオバオ)のトップライバーであるAustin(李佳琦)と2021年に年間契約を締結。3分間で8万箱を販売するなど、ライブコマースの売上が2020年にはオンライン全体の30%に達しています。

 ネットやSNSでバズった流行りの新興ブランドに見えるCHALI(茶里)ですが、意外にも設立当初から、法人顧客向け業務(B2B)の開拓に注力しています。中国調査会社iiMedia Research(艾媒諮詢)の「2020年上半期中国ティーバッグ業界の現状と消費トレンド調査分析報告」によると、ホテル、オフィス、レストランなどB2B市場で、CHALI(茶里)の市場シェアは全体の24%でトップとのこと。2021年の売上8億元のうち、B2B業務の比率を30%にまで高めることを目標にするなど、手堅い経営にも要注目です。
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