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【第554回】 低アルコール酒市場が10兆円に!

中国では若い世代ほどお酒が好き?

2023年1月18日更新

クラフトビールは人気
 ゼロコロナによる宅飲みの増加や健康意識の高まりを背景に、若者を中心に中国で「微醺」と表現される“ほろ酔い”気分を楽しむ人が増えつつあります。それに伴い、低アルコール酒の人気が高まっています。

 日本ではアルコール分が10%未満(4~8%が多い)のものを指す低アルコール酒ですが、中国では20%以下と定義が幅広くなります。中国調査会社iiMedia Researchによると、中国の低アルコール酒市場が急拡大を続けており、2022年には5,000億元(約10兆円)を突破する見込みです。ちなみに日本の2021年度の酒類市場は、焼酎やウイスキーなどを含めて約3兆円です。

 こうした低アルコール酒市場の急拡大を牽引するのが、中国の若年層です。日本では若い世代ほど飲酒習慣が少ない傾向にあるようですが、中国では京東(JDドットコム)の「2021年低アルコール酒類消費報告」からも、酒類を購入する消費者の若年化傾向がはっきりと読み取れます。

 1985年〜89年生まれの「85後」世代が全体の40%を占めているほか、「90後」(1990年〜1994年生まれ)、「95後」(1995年〜1999年生まれ)、「00後」(2000年以降生まれ)世代も酒類の主力消費層となりつつあるようです。

 アンケート回答者の8割が適度なお酒の量を好み、飲酒後のほろ酔い状態が好きと回答した人も6割近くに達しています。低アルコール酒のなかでは、果実酒が63.2%でトップ。ワインが60.9%で続き、ビール、米酒(甘酒)、カクテル、日本酒、缶チューハイなどアルコール入り炭酸飲料と続いています。

 低アルコール酒人気のもう1つの特徴は、女性からの支持です。「2021〜2022年中国低アルコール酒業界の現状及び発展トレンド研究報告」でも、低アルコール酒を好む消費者のうち、女性が6割以上を占めたもようです。

 2022年の天猫双11(ダブルイレブン)セールでも、「她経済」(女性エコノミー)の広がりを背景に、若い女性をターゲットにした低アルコール酒の取引高が前年比46%増。若い女性がお酒市場で新たな成長が期待できるセグメントとなっています。

 女性は新しいモノを試したいという意識が強いですが、酒類でも同様のようです。新発売の低アルコール酒や、珍しいフレーバーのお酒を試す女性が増加。アリババ系ネットスーパーの盒馬鮮生(フーマー)も、こうした彼女たちをターゲットにイチゴやライチなどバラエティに富んだフルーツ味のビールを発売しています。

 中国の経済成長が鈍化するなか、仕事や上司から日々プレッシャーを感じている若者も増えているのでしょう。そうした彼らが身近に“逃避できる”先として、ほろ酔い気分が味わえる低アルコール酒に向かっているのかもしれません。日本酒や缶チューハイなど、日本が得意とする各種アルコール飲料にも大きなビジネスチャンスが訪れています。
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